官僚の聖域で10億円を懐に入れた男を追え!外務省機密費事件の真実

国家のタブーに触れた二課刑事の闘い
週刊現代 プロフィール

清武 萩生田さんがいたナンバーが二課の花形なら、情報係は情報収集がメインの黒子の存在。その情報係が情報を取ったうえに、外務省室長を取り調べたのは初めてだったと思います。

松尾の逮捕を受け、対応に追われた河野洋平外務相(当時)Photo by gettyimage

萩生田 実はこの仕事を情報係から引き継ぐように頼まれたとき、最初は断ろうと思ったんです。二課の刑事というのは、自分の足でコツコツ歩いて情報をとり、ホシを引っ張ってきてナンボの世界ですから、気乗りはしませんでした。それに、当初は機密費という謎のベールに包まれたカネに対して、どうやったら犯罪を立証できるのか想像できませんでしたからね。

 

若松 仕事を引き継ぐことを決め、捜査に臨まれたときは、どんなお気持ちだったのでしょうか。

萩生田 この事件の最大の壁は機密費です。でも、内閣がそう簡単に機密費の明細を出すとは思えなかった。そこがまず大きなハードルでした。

若松 捜査二課の威信をかけて、その壁に挑んだわけですね。

萩生田 はい。でも、話のわかる人間が当時の内閣にはいたのでしょう。真正面から機密費の明細提出を内閣に求めると、意外にもすぐに応じてくれました。

清武 その前の'01年元日、読売新聞が1面で、「外務省幹部、『外交機密費』流用か」という見出しで、この事件をすっぱ抜いていた。それによって捜査がやりにくくなる面もあったでしょうが、事件の一部が公になったことで、徒にそこを隠すと、自分たちに批判が集中するという恐れを、官邸は持ったのではないでしょうか。

萩生田 そこは大きかったと思います。ただ、提出してもらった明細を見て驚きました。事件とは関係のない黒く塗りつぶされた部分が透けていて、他のカネの動きも判別できる状態だったのです。

若松 ハハハ。官邸も前代未聞の出来事に、相当慌てたのでしょう。

萩生田 だから、一度明細を返却し、黒塗りをやり直してもらいましたよ。