官僚の聖域で10億円を懐に入れた男を追え!外務省機密費事件の真実

国家のタブーに触れた二課刑事の闘い
週刊現代 プロフィール

官邸も大慌て

清武 '01年1月当初、86人でスタートした捜査陣容はその後さらに膨らみ、6月には総勢162人の大所帯になっています。捜査二課の総勢は382人でしたから、その半数近くがこの事件に動員されたわけです。そして、萩生田さんはその捜査班を率いる立場にいた。

萩生田 はい。私の知る限り、捜査二課では最大の陣容だったと思います。参考人として調べた人間は、各国の日本大使や現職の事務次官など1000名近くに及びました。

 

若松 外務省は国の重要機密を扱う、いわば「聖域」。捜査に対して、協力的ではなさそうですが。

萩生田 本来はその通りです。でも当時、外務省の人事課長だった齋木(昭隆)さんが積極的に協力してくれました。もちろん、なかには病院に逃げ込んだ外務省幹部もいましたけどね。

齋木昭隆氏(Photo by gettyimages)

清武 大使というのは、特権意識が強い人が多い。だから、そこはものすごく苦労されたと思います。

萩生田 通常の贈収賄事件で本省の課長クラス以上を警視庁に呼ぶのは大変なことで、その都度、警視総監まで報告しなくてはいけません。しかし、あのときは、捜査二課長だった樋口(眞人)さんが、本省の局長以下に関しては、「萩生田さんの判断で自由にやってください」と言ってくれたので、随分と助かりました。

若松 それはいい。実はいま撮っているドラマの『石つぶて』でも、佐藤浩市さんや江口洋介さんらが演じる強者のノンキャリアの刑事たちを、捜査二課長役の萩原聖人さんが年下でありながら、うまく掌の上に乗っけて捜査を進めていく作りになっています。現実そのままです。

清武 この事件が発覚したキッカケは、ある外務省OBからの告発だったことを後に知りました。捜査二課第一知能犯情報係の中才宗義という刑事が、水野清(元建設大臣)を介して、外務省OBから情報を入手したのです。

萩生田 情報係が松尾本人を事情聴取し、そこからの本格的な捜査を我々ナンバーが担当した。でも、仕事を引き継ぐまで、情報係の捜査状況はほとんど知りませんでした。捜査二課というのはそういうところなんです。同じ課の人間にも、どんな仕事をやっているのか漏らしません。