始まったバノン「トランプ大統領への逆襲」

アラバマ予備選は政権崩壊への第一歩か
中岡 望 プロフィール

暗黙の路線変更とバノン切り

トランプ大統領のバノン路線の変更は、対外関係でも暗黙のうちに進んでいる。

パリ協定離脱に関しても、ホワイトハウス内から「アメリカの主張が受け入れられれば離脱しない」との発言も出ている。NAFTA(北米自由貿易)の再交渉も通常の通商交渉の見直しに留まりそうな気配である。メキシコ国境での壁の建設も大きく進むとは思われない。オバマケア廃棄の見通しはまったく立っていないし、税制改革も頓挫するとの見通しも囁かれている。

海外での軍事的な関与からの撤退という選挙公約も、シリアへのミサイル攻撃に始まり、アフガニスタンへの増派、北朝鮮に対する軍事的関与などで有名無実になりつつある。バノン氏が首席戦略官であった時に強力に主張した、中国の為替相場操作国への指定もいつの間にか消えてしまった。

これらの選挙公約はいずれも極右のオルトライトの指導者であり首席補佐官であったバノン氏が主張した政策である。ホワイトハウス内では、政策路線を巡ってバノン氏やゴルカ副大統領補佐官らのオルトライト派と、コーン国家経済委員会議長やクシュナー大統領補佐官などの国際派が激しく対立した。

そしてバノン氏の反対を押し切ってトランプ大統領はプリーバス首席補佐官を解任し、前国土安全保障長官のジョン・ケリー氏を後任に据えた。ケリー首席補佐官の使命は、ホワイトハウス内のガバナンスを確立することと、バノンの処遇を決めることだった。

ケリー首席補佐官は躊躇することなくバノン氏を首席補佐官から解任、さらにゴルカ副補佐官も解任し、ホワイトハウス内でのオルトライトの影響を一掃した。

解任されたバノン氏は「トランプ大統領のために国際派と戦う」というメッセージを残して、古巣のオルトライトのアウトレットである『ブライトバート』に復帰する。バノン氏を追うように解任されたゴルカ氏は「トランプ革命は終わった」というコメントを残してホワイトハウスを去り、バノン氏と行動を共にしたのである。