始まったバノン「トランプ大統領への逆襲」

アラバマ予備選は政権崩壊への第一歩か
中岡 望 プロフィール

実績があがらない国内政策

トランプ政権が発足して9カ月が過ぎようとしている。だが、この間、トランプ政権は目立った実績を挙げていない。大統領令によって、オバマ政権の実績をことごとく覆してきたが、議会で成立した主要法案は何もないと言っても過言ではない。

トランプ大統領は8月22日、アリゾナ州フェニックスで開かれた集会に出席し、「我々は50本以上の法案を成立させた」と政権の成果を誇った。正確に言えば、8月段階で成立した法案の数は53本である。また数多くの大統領令に署名している。

だが、その大半はオバマ前政権の元に成立した法律やプログラムを覆すもので、トランプ大統領の独自の政策の実現ではなかった。

 

最大の公約であったオバマケア廃棄法が可決される見込みはたっていない。メキシコ国境の壁の建設費は大統領令で指示したものの、議会では予算措置は実現していない。大規模なインフラ投資計画は何も具体化していない。公務員削減による行政のスリム化も当初案から大きく後退している。トランプ政権の大きな成果と言われるものは何もないと言っても過言ではない。

だからと言って民主党に接近?

そんな行き詰まりの状況の中で、トランプ大統領は静かに「軌道修正」を始めている。まず民主党との協力関係を模索し始めたことだ。

「不法移民の子供の特別保護措置(DACA)」の取り扱いについてトランプ大統領は民主党と協調する方針を打ち出した。

9月13日にナンシー・ロペス下院院内総務とチャック・シューマー民主党上院幹事などをホワイトハウスの夕食会に招待し、ドリーマーと呼ばれる子供の時に両親とともに不法入国した子供たちの取り扱いに関して寛容な取り扱いをすると妥協したと伝えられている(トランプ大統領はツイッターで「妥協はしてない」と否定している)。

不法移民の強制送還など厳しい対応を求めるトランプ支持者の一部は、トランプ大統領が融和的な政策を取るのではないかとの見通しに反発して、大統領選挙中に被っていた「アメリカ・ファースト」と書かれた野球帽に火をつける事態も起こった。

さらにトランプ大統領は税制改革に関しても「超党派でないと成立しない」と、暗に民主党との妥協がありうると示唆する発言も行っている。目玉政策のひとつであるインフラ投資はむしろ民主党が歓迎する政策でもあり、ここでも最終的にトランプ大統領と民主党の協調はありそうである。