始まったバノン「トランプ大統領への逆襲」

アラバマ予備選は政権崩壊への第一歩か
中岡 望 プロフィール

バノン氏の「候補」はやっぱりこういう人

バノン氏は『ブライトバート』を使ってムーア候補支持の論陣を張った。こうしたバノン氏の支援に対して、ムーア候補は「この選挙で誰よりも彼(バノン)が私を勇気づけてくれた」と感謝の意を表現した。

だが、トランプ大統領はマコーネル院内総務と共にストレンジ候補支持を打ち出した。トランプ大統領は「私はかつて予備選挙で特定の候補を支持したことはない。私は間違いなく批判されるだろうが、私のアジェンダ(政策)を実現しなければならない」と支持を呼び掛けた。

 

予備選挙直前の9月25日にはツイッターで「明日はアラバマ州で大きな選挙が行われる。犯罪や国境問題で厳しい態度を取るルーサー・ストレンジ上院議員に投票しよう。彼は皆さんを失望させることはないだろう」とも呼びかけている。ペンス副大統領も「大統領はルーサー・ストレンジを再び上院に戻す必要があると考えている」と、支持を訴えた。

トランプ支持団体のアメリカ・ファースト・ポリシーズは、ストレンジ候補に100万ドルの政治献金を行っている。ただ同じトランプ支持団体であるザ・グレート・アメリカンPACはムーア支持の決起集会を主催し、バノン氏と同じく解任されたゴルカ元副補佐官やペイリン元共和党副大統領候補など反主流派系の人物が参加するなど、トランプ陣営に乱れも出た。

深刻、敗戦のダメージ

そして、26日の予備選では9ポイント以上の大差をつけて、ムーアがストレンジを破った。

自らが強力に支持した候補者が敗北したことはトランプ大統領にとっても大きな痛手である。『ワシントン・ポスト』(9月26日)は、「トランプ大統領は重要な法案成立で失敗し、アラバマ州の予備選挙で無力であることを示した」「共和党議員はトランプ大統領のリードに従わなくなるだろう」と、トランプ大統領の議会に対する影響力の低下を指摘している。

バノン氏は「我々はトランプ大統領に反抗するためにここに来たのではない」「トランプ政権のアジェンダ(政策)を取り戻すことだ」と訴えるなど、トランプ大統領を直接批判することは避けている。

しかし、バノン氏は、選挙運動の中で共和党に対する「宣戦布告」を行っている。具体的には、来年行われる中間選挙で共和党現職が弱い選挙区であるアリゾナ州、ネバダ州、ミシシッピ州、テネシー州などでオルトライト系の候補者を擁立する方針を明らかにしている。

アラバマ州の上院補欠選挙は、最終的に共和党のムーア候補と民主党のダグ・ジョーンズ候補との間で行われる。そもそもアラバマ州は共和党の州で、セッションズ前上院議員は90%の票を獲得しており、本選ではムーア候補の勝利は動かないだろう。極右の上院議員が誕生することで、共和党主流派にとって議会運営はさらに厳しいものになるだろう。