「大丈夫か、やれるか?」
さてプロ部長の3つめのスキルとは部下との人間的なコミュニケーション能力である。
上司と部下で強い絆を持てるというのは組織人としての理想である。先輩に教えられ、課長に愛を込めた説教をされといった絆で会社員は育って行く。
これを個人同士の関係として保てる最後の上司が実は部長なのだ。というのは執行役員から上のポジションでは部下との関係が育成から即戦力としての活用に移る。関係性はどうしてもドライになっていく。

少し古いかもしれないが伝わりやすい企業ドラマの例で話そう。テレビドラマ『半沢直樹』では主人公と人間的に行動を共にするのは同僚であり部下というのが基本構造だ。役員や支店長は組織的な政治力学の中で時に対立し時に利用される関係になる。
その中で唯一、人間的な半沢直樹の上司として登場したのが吉田鋼太郎演じる内藤部長だった。このドラマの中では「唯一まともな上司として描かれている」と評される通り、困難に直面した半沢直樹に対して「半沢、やれるのか?」と冷静に確認をとり、状況に応じて半沢直樹が極度な緊張状態に陥らないようにサポートする。
その一方で、明らかに不条理な上層部からの指示が降りてきた場合でも、それが組織にとって必要だと判断した場合には半沢直樹を説得する行動に出る。
このバランス感覚こそが、プロ部長のスキルの完成形と言っていいだろう。
要するに部というものは、それはそれで大企業にとっての重要な組織単位なのだ。そこで部を統率する立場にいた人物には、それなりのスキルが必要とされる。
ましてや現代のように組織の中に無駄な存在を置く余裕がない時代においては、そこで部長として機能してきた人物には、今回述べたようなプロ部長のスキルが備わっている可能性は限りなく大きいという話なのである。