クルマの「完全自動運転」でなくなる職業・モノ全リスト

運転手がいらない世界はもうすぐそこに
週刊現代 プロフィール

個人所有のクルマが減るとなると、自動車関連産業を生業とする人々の働き方はまったく違ってくる。

いちばん大きな変化を遂げるのは、タクシーやバスの運転手といった人々の働き方だ。完全自動運転車は、スマホで呼べば「自分で」来て、目的地に到着すれば駐車場まで勝手に戻っていく。

一切運転手が介在しなくても、「人を運ぶ」という本分は果たせてしまうことになる。先述の東京五輪におけるドライバーレス化がいい例だ。

これはトラックの長距離ドライバーにも同じことがいえる。自動運転では、先頭のトラックの流れに沿って、数台のトラックが無人で追尾することが可能だ。

つまり、周囲の環境を確認したり、燃料を補給するときにクルマを誘導したりする先頭ドライバー一人がいるだけで、いまよりも数倍の荷物を運ぶことができるようになるのだ。

 

警察官も激減

荷物の積み下ろしを行うのにはどうしても人手(ドライバー)が必要だが、自動運転中は伝票の整理をしたり、疲れたら仮眠を取ったりすることもできる。事故は圧倒的に減り、運転手の「働き方改革」を実現することにもつながるのだ。

「事故件数だけでなくクルマの所有者数自体が減るので、個人向けの自動車保険の売り上げは大きく減るでしょう。アウディがA8を発表する際に、『自動運転が正常に作動しているときに起こった事故の責任は、会社が負う』と宣言しました。

これまで自動車保険は加害者で責任を負う立場になるドライバーが入るものでしたが、その考え方自体も大きく変わりますから、現状の損保業界は、このままのやり方では立ち行かなくなっていくでしょう」(前出・鶴原氏)

ドライバー以外の業種もいまと同じようなビジネススキームでやっていけるかどうかはわからない。

まずロードサービスを提供する人々の生活は劇的に変化する。ドライバーは運転で疲れることがなくなるため、高速道路のSAやPAはいまほど利用されなくなるだろう。

ガソリンスタンドの店員やクルマの整備士も激減していく。EV化した自動運転車は専用の機器で充電されるが、それがあらゆる駐車場に配備されることになれば、自動運転車は駐車場で待機しているあいだに「給油」を終えてしまう。

また、もし車内のシステムに不具合があれば「自分で」問題点を見つけ、自動車メーカーにアポイントを取り、勝手に修理へ向かう。そこではAI搭載の整備ロボットが待機していて、すぐに問題を解決してくれる。

それだけではない。難しい運転技能はいらなくなり、免許はあくまで「危機回避能力」があることを証明するだけだ。高い講習料を払って、長い期間教習所に通うこともなくなる。もしかしたら、教習所の「教官」こそ自動運転化されているかもしれない。

警察官の人数もいまより圧倒的に少なくなる。交通事故が起きる回数が激減するうえに、人間よりもはるかに「理性的」な自動運転車は交通違反を起こす心配もない。

警察官の道路上での仕事は、時たま起こる自転車と歩行者の事故や違反を整理するだけになっていくだろう。

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自動運転が仕事を食いつぶす――まるで「恐怖の魔王」のように見えてくるが、決して人間の未来を不幸に陥れるようなことばかりではない。

少子高齢化が進んでいくなかで、特に専門性の高い技術職は働き手不足になっていく。

また、先述の長距離ドライバーのようなタフネスを要する仕事も労働環境が苛酷になっていくばかりだ。このような労働力のミスマッチを解消するのに自動運転が一役買う可能性が十分にある。

「今後、都市部への一極集中化が進んでいくといわれていますが、カーシェアと自動運転技術が進めば土地のムダを一気に減らすこともできます。

クルマは、駐車場の手前まで着けばスマホの操作ひとつで自動的に駐車場へ向かいます。駐車場でドアを開ける必要はないので、狭い車間距離でも駐車でき、省スペース化が劇的に進むのです」(経済評論家の加谷珪一氏)