# 戦争 # 日本史

考古学が解き明かす「人類史上、戦争はいつどのように始まったのか」

いまこそ問いたい、知りたい
松木 武彦 プロフィール

個体どうしから集団どうしの闘争へ

だが、農耕以前に、戦争とまでは言えなくても、その源になるような争いの行為が存在していたことまでは否定できない。

狩猟と採集をなりわいとする社会の遺跡からも、闘争で傷ついた人骨などが出土する。縄文時代も例外ではない。個体どうしの生存競争によって種の継続が保たれるという生物学の原理は、ヒトにも当てはまるのだ。

重要なのは、このような個体どうしの闘争が、集団どうしの間の闘争である戦争に、どのようなメカニズムでつながっていくのかという問題である。

 

集団間の闘争そのものは、昆虫のような比較的下等な生物から、ヒトともっとも近いといわれるチンパンジーのような霊長類まで、生物界にはめずらしくない。

その中でヒトの集団間闘争が特異なのは、戦い合う集団の規模が、群を抜いて大きいことにつきる。

ヒトに近いチンパンジーの闘争は、数頭からせいぜい十数頭程度の集団の間で行われる。

この集団は父子・兄弟などの濃い血縁を軸としたものだから、もし闘争で命を落としたとしても、自分と同じ遺伝子の多くが生き残った個体に受け継がれ、次世代に伝えられる。

つまり、集団レベルの闘争への参加が個体レベルの生存競争にもプラスに働く点で、生物学的に合理的だ。

これに対してヒトの場合、たとえば国家間や宗教勢力間の戦いを思い浮かべるとわかるように、闘争と引き換えに守られる遺伝子のほとんどあるいは全部が、そこで命を落とす個体とは関係がうすい。生物学的には不合理である。