中国で生まれた新たな職業「シェアサイクルの回収人」その実態

メンテナンス兄貴の肉体労働物語
安田 峰俊 プロフィール

「兄貴」たちは自転車を毎日200回片付ける

メンテナンス兄貴の朝は早い。ofo社の自転車回収部隊で北京市天安門区域を担当する小隊長・梁錚は、毎日午前3時半から街の見回りをはじめるという。帰宅は20時間以上も後のこと。この地域では昼シフトに150人、夜シフトに50人の兄貴たちが組織され、朝のラッシュ時に大量に放置されるofo車を黙々と片付け続ける。

シェアサイクルをつかんで1メートル近くの高さまで担ぎ上げ、回収運搬車に載せる。梁隊長ほどのプロともなれば1台3秒でできるらしい。大量の自転車を持ち上げるには体力も必要だが、パズルさながらに放置された大量の自転車をどのように回収して再び並べ直すのかは、相当な頭脳労働でもあると彼は語る。

北京市内三里屯付近。回収車を停車させられてガードマンに怒られているメンテナンス兄貴(右)と、それを眺めつつ過ぎ去る仲間(左)。筆者撮影。

ofoの回収運搬車は、朝は住宅街の入口や地下鉄駅付近に、昼はオフィス街に、夜は再び地下鉄駅付近に……と、利用者の多そうな場所にシェアサイクルを配置しなおす。梁隊長たちは街を動き回って放置されている車両を並べなおし、ときに狭い路地裏などに乗り捨てられた車両を発掘することもある。

 

「二環路(北京市内中心部の環状道路)の内側なら、誰かが乗り捨てたって俺たちは10分以内に処理に向かうことができるんだぜ」

そう語る梁隊長のスマホには、住宅街管理員会や城管(半公半民の都市整備組織)、交通警察などのチャットグループが50件以上も登録されている。彼らから放置されたofo車の写メが送られてくると、梁隊長は即座に背景を見て場所がどこかを特定する特殊技能を持っており「AI(人工知能)と勝負しても勝てるぜ」と怪気炎を上げているという。

「毎日、うちの会社のシェアサイクルをすぐに片付けているんだが、(片付けがいい加減な)他社の車両も目に入っちまう。余力があるときは他社の車両でも並べなおしているんだ」

仕事は夜まで続く。梁隊長は作業を1日に150〜200回おこない、計算すると1日あたり持ち上げる車両の総重量は2000キログラム以上、歩数は2万歩以上に達するという。酷暑酷寒もものともせず、メンテナンス兄貴は今日も北京の街で戦い続けるのであった――。