IQ28障がい児の母が語る「小児病棟はシングルマザーだらけ」

病室から銀座に通う夜職ママも
伊藤 みかこ プロフィール

「見てください、歌うと笑うんです」

伊藤さんは長かった入退院生活を「(小児病棟では)すごいドラマが繰り広げられていて……」と振り返る。

毎日夜の8時、消灯間近に飛び込んで来て、おむつだけ置いて帰る母親。病院に来ても子どもの顔を見ず、用事を済ませて数分で帰っていく母親。知的障がいの子どもとともに4年以上も付き添い入院している母親。乳幼児のため医療費はかからないものの個室のベッド代や生活費を稼ぐために毎夜、銀座に働きに出るシングルマザーも。病室には、さまざまな母親たちがいた。

 

「3年くらい入退院を繰り返していましたけど、(大部屋で同室になった人は)ほとんどがシングルマザーでした。水頭症の子とか、気管切開になってる子とか、いろんな(病気や症状の)子がいるんだけど、一つ共通してるのはパパがいないこと」。そして、頑張っている母親ばかりだったこと。

子どもと一緒に入院となると、母親たちにとって家庭生活は二の次三の次にならざるを得ない。その大変さに、逃げて行く父親が多い気がすると伊藤さん。

「入院させたまま来ないとか、退院になっても迎えにこないとか、そういう親もいたんですね。そのために、当時入院していた医療センターには付属の乳児院があって。『この子はお母さん来ないね』と思っていたら、乳児院の子だったり」

乳児院とは、家庭での養育が難しい0歳~就学前までの子どもを預かる施設のこと。両親はいるがけがや病気などで保育が難しいために預けられる子どももいるが、保護者不在で乳児院に入る子どもたちも少なくない。

伊藤みかこさん:ご本人より写真提供

もちろん、中には週末には必ず病院にやってきて、朝から晩まで子どもに子守歌を歌ってあげているような熱心な父親の姿も。

「気管切開している医療ケア児の女の子のお父さんが1日中子守歌を歌ってあげていて、『見てください、歌うと笑うんです』なんて言うんですよ。意識がなく、自発呼吸もできないのに……すごく切なかった。(それを聞いた後は)カーテン越しに泣きました」

しかも日中は、寝たきりのその女の子をお姫様抱っこしてリュックを背負い、病院の外へ散歩に連れて行く……その健気さに心を打たれたという。

「でも、その子のお母さんの方は子どもの病気を受け入れられなくて、同伴入院にもお見舞いにも来られなくなっちゃった。私が最後に見かけたときは、お母さんが先生に『退院の際は絶対家に連れて帰りたくないから、施設に入れたい』って訴えていました。その横で絶望して立ち尽くすお父さんの姿を、今でも鮮明に覚えています」