メルカリが実践して、アパレル業界が見落としている成功のための秘訣

メルカリ小泉文明×軍地彩弓【中編】
QREATOR AGENT プロフィール

百貨店に潜む、こんな課題

軍地 その観点でいくと、百貨店の問題としては、接客や対面販売という売り方が現代人の価値観に合わなくなっているというのはありますね。

小泉 私の個人的な意見ですが、売り場を表現の場として使ってしまうぐらい割り切ればいいと思っています。あとから郵送するという前提で買ってもらえば、店舗で在庫を抱えて保管等をするコストも削れますから。平積みもあまり意味がないんじゃないかと思ってしまいます。

 

軍地 ただ、百貨店は委託販売ということが前提にあるんですよね。バックヤードに商品数があることをメーカー側に課している百貨店もあって、商品が買えなかったというクレームが起こらないようにしているんです。

これは日本企業の改善点のひとつだと私は思っているんですが、クレームを気にしすぎていて、まずはクレームをクリアすることが美徳になってしまっている。

小泉 個人的には、百貨店や雑誌とかアナログなものは好きなんですけどね。百貨店は暇さえあれば遊びに行くんですが、やっぱり気分が上がります。仕事でデジタルをやっているからこそ、リアルな価値を感じて心が揺さぶられたり、すっきりと整った情報を欲しているのかもしれません。

◇軍地彩弓(ぐんじ・さゆみ)講談社の『ViVi』編集部でフリーライターとして活動後、雑誌『GLAMOROUS』の立ち上げに尽力する。2008年には、現コンデナスト・ジャパンに入社、『VOGUE girl』の創刊と運営に携わる。​2014年には、自身の会社である株式会社gumi-gumiを設立。現在は、雑誌『Numéro TOKYO』のエディトリアルディレクターから、報番組「直撃LIVEグッディ!」のコメンテーターまで、幅広く活躍する。

軍地 デジタルだと、自分が見たくない情報も出てきてしまう部分がありますよね。安いものと高いものがごちゃ混ぜに出てたり。編集者はそういう情報を整理したくなる職業であり、ある程度美しく整ったものをみなさんも見たいのではないかと考えています。

最近ではレコードやラジオなどが売れていたりとアナログ回帰をしている人もたくさんいて、全てがデジタルに置き換わることはないと感じます。そういう意味では、メルカリは欲しいものが見つけられた時の嬉しさとか、購入者同士のコミュニケーションなど、アナログな部分も存在していますよね。

小泉 ただ、僕自身は、効率性が追求されすぎていたり、無機質すぎたりするとつまらないなと感じるんですよね。「セレンディピティ」がないものに対して拒否感があるというか。

たまたま出会った運命の掘り出し物のようなものがないとつまらない。効率化をやりすぎると、ニーズがない時には使わなくてもいいものになってしまうんです。いろんな出会いがあるから面白い。

軍地 実は、ECサイトの運営をしている人から、「自分たちのサイトで服が売れない理由は何か」と聞かれたことがあります。その時の私の答えは、「画一的なフォーマットで見せる”効率化のプラットフォーム"は、ファッションと相性が良くない」というものでした。

ファッションは出会いであり、おしゃれな店内や綺麗なラッピングなども含めての値段だから、商品の写真だけをただ掲載しているサイトには夢も希望もなくて、人も寄り付かないのは当然なのかなと感じています。

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小泉 私自身の経験からも、偶発的な出会いがメルカリで生まれているところは気に入っています。メルカリで自分の好きなブランドを検索してもらうと、好きなブランド品のなかでも実際に買えるものだけを集めた夢みたいなカタログメディアが手に入るわけです。

これは、リアル店舗や他のECサイトでは実現できません。1〜2年前のものでも買える状態で毎日更新される。最高ですよね。

軍地 その肌感を持っているからこそ、スマホの中のメルカリみたいなWebサービスでも、人の心を捉えることができているんでしょうね。