メルカリの隆盛を通して見える、消費者心理の変化について話した前編に続き、中編では「ファッション業界の今」をテーマに話は展開する。百貨店の課題や他のECサイトが直面している落とし穴などを、ファッション誌編集者の軍地彩弓と、メルカリ社長の小泉文明が双方の視点から語ってくれた。
(前編はこちらから)
軍地 若い人の価値観にマッチしたサービスを展開されているメルカリですが、ライブコマースの機能が新たに始まりましたね。ライブコマースを開始した狙いなどはあるのでしょうか?
小泉 先ほど(前編にて)述べたとおり、消費者の価値観が変化してきた中で、写真4枚と説明文だけでは限界があると感じていました。どんどん通信環境も早く安くなっていくので、ライブ性による表現力の増強を図りたいなと考えてライブコマースという選択をしたわけです。制限をした上でのスタートではありますが、実際に物は売れています。
軍地 商品を売るときに、言葉によって説明できるのは強いなと私も思います。
先日、ショップチャンネルの生放送に出演した際、ライブなので「完売しました」などの最新の状況も飛び交いながら番組が進むわけですが、ナビゲーターの方がものすごい情報量を詰めて話すわけです。言葉でのセールスのすごさ、ライブの強みをまざまざと感じました。
小泉 声の大きさや抑揚が効くだけでも全然違いますからね。
軍地 そういったセールスの話になると、今の百貨店は「商品を並べて終わり」で、言葉を介してうまくセールスできていないなと思ったんです。メーカー側も、百貨店の場所取りに躍起になっているだけで、商品が置いてきぼり。
よく私は「越後屋に戻ればいい」と言ったりしますが、しっかり商品について説明すれば、お客さんの反応も変わることってあるじゃないですか。このあたりは、売り込む側のメーカーや百貨店の認識が足りないのかもしれません。
小泉 百貨店は販売員さんのマンパワーによるというのはありますよね。メルカリやネットのいいところは、その売り手のことが嫌だったら逃げられるという点もあります。店舗だと逃げづらく、押し売りされるのが嫌だと私も思ったりしますから(笑)。
軍地 対面販売が苦手、という人も多いですね。
小泉 だから、ある程度距離感があるライブコマースの方が、売る人も買う人も楽だろうなと感じます。いらないと思えば放送を切ってしまえばいいし、売る方も売りたくないと思えば素直に売らないという選択肢もありえますから。