いま、プロの資産運用の世界で起こっている「異変」から学ぶべきこと

寿命100年時代のマネーシフト③
加谷 珪一 プロフィール

超優良企業コマツも見方を変えれば

これは製造業にも当てはまる。たとえば、建機大手のコマツだ。コマツの業績は良好であり、日本の中ではグローバルに通用する数少ない企業のひとつである。

しかしながら、グローバル市場から見た時のコマツは、健闘はしているものの、業界トップである米キャタピラーにどうしても追いつくことができない万年2位企業という位置付けにならざるを得ない。

キャタピラーの2016年12月期の売上高は約4兆3000億円だが、コマツは1兆8000億円と半分以下である。時価総額もキャタピラーが約8兆円もあるのに対してコマツは約3兆円と半分以下にとどまっている。

 

建機のビジネスはグローバル化が以前から進んでおり、最近ではITを活用し、納入した建機の稼働状況を常にメーカー側がモニターするのが当たり前になっている。キャタピラーとコマツの両社は共に同様のシステムを持っており、同一の市場で競争している。両社に投資を検討する投資家にとって、本社所在地は重要な問題ではない。

一方、投資の世界にはポートフォリオという概念があるため、建機の分野での投資は1社に限定される可能性が高い。この時、投資家はコマツに投資をするだろうか、それともキャタピラーに投資をするだろうか。この話は、自身が自動車メーカーへの投資を検討する場面に置き換えてみれば分かりやすいだろう。

トヨタもホンダも優良企業ではあるが、ホンダの売上高や利益はトヨタの半分以下である。自動車メーカーの中で1社に投資するということになれば、初心者ならやはりトヨタを選択するのではないだろうか。建機に投資をするなら、そして初心者であるならなおさらキャピラーの方がよいという結論になるはずだ。

もしコマツに投資妙味があるとすれば、多少リスクを取ってキャタピラーを追撃する態勢を整えた時だろう。だがこうした銘柄への投資はどちらかというとハイリスク・ハイリターンの投資であって、長期投資を志す投資家のやり方ではない。

初心者ならなおさら外国企業へ

図は日本の大手企業と、同じ分野で活動する外国企業の売上高と営業利益をマトリックスにしたものである。

マトリックスの右上に行けば行くほど、売上高と利益が大きいことを示しているが、日本企業の多くは左下に集中している。グローバル企業として十分な経営規模があるのはトヨタのみとなっており、ソフトバンクと日立は両者の境界領域に位置している。

日立は残念ながら複数業種の寄せ集めとなっており、各事業の経営規模はそれほど大きくない。実質的には左下に位置する企業と考えてよいだろう。

このグラフに出てくる企業の中では、トヨタとソフトバンクくらいしか、グローバルに通用する企業は存在しないことになる。

投資の初心者や、長期的な資産形成を目指す個人投資家にとって、規模が大きく、経営が安定しており、高い知名度があることは重要な選択基準となる。その点からすると、多くの日本企業はこのカテゴリーに入らない。

企業規模がそれほど大きくないような銘柄は、株式投資の世界では投資妙味がある(投資する醍醐味がある)とよく言われるが、それはつまりリスクがあるものの大きなリターンが得られるかもしれない、ということ。初心者ではなく相場に慣れた中上級者が取り組むべきものというのが一般的な考え方である。

グローバルに見た場合、日本企業の多くは初心者向けの銘柄ではなく、中上級者向けの銘柄になってしまうのだ。どの証券会社でも簡単に外国株が買えるという現実を考えると、投資の初心者であればなおさらのこと、日本株ではなく、外国株を積極的に投資対象に組み入れる必要があるだろう。

次回は、日本株にはない外国株投資の注意ポイントや、具体的に外国株をどう選択すればよいのか、また証券会社でどのように購入すればよいのかについて、わかりやすく解説してみたい。