いま、プロの資産運用の世界で起こっている「異変」から学ぶべきこと

寿命100年時代のマネーシフト③
加谷 珪一 プロフィール

例えば楽天の場合

公的機関が日本企業の持ち株シェアを拡大させる一方で、企業年金のポートフォリオにおける日本株の比率はこのところ大きく低下している。

アベノミクス以降、多少の上下はあったにせよ、日本株は順調に上昇してきたことを考えると、この動きは少々不可解に見える。

おそらく企業年金は、日本株の比率を積極的に下げようとしてきたわけではないだろう。だが、合理的な基準で投資対象を選別していく過程において、必然的に日本企業への投資割合が減ってしまったものと考えられる。このような現象が起きる背景となっているのは、企業活動の標準化である。

ここ数年の間に、ITをベースにした企業活動の標準化が急激な勢いで進展し、多くの企業が、国や地域に関係なく同じ枠組みの中でビジネスをするようになってきた。つまり国内企業、外国企業といった形で切り分けること自体がナンセンスになっているのだ。

 

もっとも分かりやすい例は楽天だろう。楽天はグローバル展開を試みてはいるものの、基本的には「楽天市場」という国内のネット通販サービスと、楽天証券に代表される国内金融サービスが主体である。従来の考え方では、ネット銘柄であると同時に、内需銘柄という位置付けになるはずだ。

ところが楽天の最大のライバルはどこか? と考えた場合、それはアマゾンにならざるを得ない。アマゾンは全世界統一の基準を持ち、楽天にはない新しいサービスを次々に投入している。

楽天とアマゾン、あなたはならどちらに投資する? Photo by GettyImages

今後のネット通販の勝敗を握るのは、AI(人工知能)の開発能力であることはもはや常識となっており、楽天がアマゾンの追撃を振り切るためには、アマゾンと同等か、それ以上のAIサービスを投入しなければならない。

これがスーパーなど従来型小売店であれば、商習慣のカベが大きく外国企業の日本進出は容易ではなかったはずだが、ネットの商習慣は世界標準であり、どの国でもたいした違いはない。楽天は国内企業なのでアマゾンとは違うのだという論理は成立しにくいのだ。

ネット通販は今後も伸びるか? と質問すれば多くの人が「伸びる」と回答するだろう。そうであるならばネット通販は有望な投資対象ということになるが、この時、投資すべきなのは国内企業である楽天だろうか? それとも外国企業であるアマゾンだろうか?

本社所在地という区分さえ取り除いてしまえば、多くの人がアマゾンに投資したいと考える可能性は高い。グローバルな企業活動が当たり前になった今、ポートフォリオの中にネット通販を1社加えるなら、楽天ではなくアマゾンというのが自然な結論だろう。