アパレルメーカーがヒット商品を生めなくなった、ひとつの原因

メルカリ社長×軍地彩弓【前編】
QREATOR AGENT プロフィール

新しい、がリスクになる時代

軍地 ファッションメーカーは間違いがちなのですが、常に新作を出し続けてトレンドを作ろうとしますが、消費者はそこまでトレンドに追いついていける訳ではありません。今手に入るものを継続して買いたい・定番化してほしいというニーズが掴みきれていないんです。つまり、"時勢の崩れ"が起こっています。

私のような仕事をしていると、最新のものを着なければならない場面がよくあります。しかし、メーカーの都合などとは関係ないところで、やっぱりあの服が好きで着たいなと2年ぐらい前のものでも引っ張り出すことも増えてきました。毎シーズンの新作を着ようというのが、メーカーやメディア側のエゴだったという気づきに繋がったんです。

小泉 確かに、時勢の崩れは気になるテーマですね。

 

軍地 最初に時勢の崩れに気づいたのは、ファッション雑誌『VOGUE girl』の編集をしていた、SNSなどが流行り始めてきた2010年頃です。女の子たちに買った新作アイテムを取材させてもらうことをよくしていたのですが、そこで出会ったある女の子のことをよく覚えています。

「最近、新作でどんな服を買いましたか?」と聞いたらポカンとされて、「新しいものを買わないといけないんですか?」と言われたんです。「新作と紹介されるものは"古くなる"ということですよね。新しいものを買うとすぐ価値が下がってしまうから、新作と言われると私は買いません」と。

小泉 鋭い指摘ですね。

軍地 そうなんです。"新しいことがリスクになる"というのを、私もその時に痛感しました。そう答えた彼女が何を着ていたかというと、ファストファッションとハイブランドの新作の靴に、某ブランドのレザーバッグを合わせていました。

バッグはお母さんのクローゼットから引っ張り出してきたと言われて、さらに驚きです。安いものと高いもの、新しいものと古いものをミックスマッチさせた彼女のファッションが新鮮で、彼女の言葉の相乗効果もあって心に刺さりました。

(取材・文:田中利知+YOSCA 企画・編集:FIREBUG 写真:森弘克彦 イメージ写真:shutterstock 中編は明日公開予定です)