日本社会ではいま「多数派」が一番苦しい? 二極化の先にあるもの

「こうあるべき」という規範がつらい…
小野 美由紀 プロフィール

中間層が実は一番しんどい?

小野:障害者に対する社会の見方であったり、介助者が置かれている社会的な環境であったり、色々なものが複雑に絡まりあって「彼という人格を作った」という感じがします。

先生ご自身は相模原の事件から1年経って、今どのようにお感じになっていますか。1年前から考え方が変わられた部分はありますか?

熊谷:1年経って、以前にも増して私が強く実感しているのは、「思いの外、多数派が今苦しんでいるのでは?」ということです。

 

小野:多数派が苦しむ……。マジョリティとして扱われている人? マイノリティではなく?

熊谷:そうですね。もちろん、マイノリティも苦しい時代です。

しかしそれと同時に、少なくとも自覚としては「自分はマジョリティだ」と思っており、そして周りからもそう見られやすいグループの一部の人達が、かつてない、といってもここ半世紀ぐらいの間ですが——にはなかったほどの、不安や不満を溜め込んでいそうであるということに、あれから1年経っていろいろなことを見聞きする中で気付かされました。

衝撃を受けたのが、慶応大学で財政学の専門の井手英策さんが教えてくださったんですけど、いわゆる弱者を排除しようとする言説、例えばヘイトクライムとか差別的な思想に一番とらわれているのは中間層のしかも比較的上の方であると。

小野:えっ、生活に何の不満もなく、豊かに暮らしていけそうな層ですよね!?

〔PHOTO〕iStock

熊谷:本当にびっくりしました。てっきりもっと、生活が苦しい状況にある人が「私はこんなに頑張っているのに苦しい。なのに何でお前らは福祉の恩恵を受けているんだ」と、例えば生活保護バッシングのような形で弱者を批判するんじゃないかと思っていた。

小野:私もそう思っていました。

熊谷:実はそうじゃないんだというのをデータとして教わって。中間層の中でも、相対的に恵まれている人たちが排他主義を強めている。

今、社会の二極化がどんどん進んでいて、中間層が没落しつつあると言われていますが、その一方で大金持ちの層がより恵まれた状況になっていっている中で、どこの層がいちばん不満に感じているのかというと、もしかしたら、大金持ちに手が届きそうだけど手が届かない層というか、だんだん離れていっている実感のある層なんじゃないか、と。