金正恩氏の行動は、元経済ヤクザの眼から見れば驚くほど合理的だった

ミサイル2発で「成果」を得たのだから
猫組長

ロシアン・マフィアと北朝鮮と

金正恩氏は何を得たのか。

一つは国連演説で、トランプ大統領から「米国の同盟国を守る必要に迫られた場合、北朝鮮を完全に破壊する」という言葉を引き出した点だ。完全破壊まで行うとすれば、その軍事行動にはロジスティックス(兵站)の整備が不可欠となり、一般的にその準備に3カ月はかかるといわれている。つまり、2発のミサイルを発射したことで最短でも12月までの「猶予期間」を作り出すことに成功した、ということだ。

さらに「石油」の問題でも北朝鮮は多くを得たと私は見ている。

アメリカやイギリス、オランダから石油という生命線を止められたことで、物資確保のために第二次大戦に突入したのが日本である。当時の日本といまの北朝鮮を重ね合わせ、「全面禁輸は北の暴発を招きかねない」という判断が働いたのか、北朝鮮は(制限されたとはいえ)「禁輸」させずに石油を得る道を残すことに成功した。

これは、金正恩氏が核開発とミサイル実験によって、かつての日本のような「暴発の恐怖」を掻き立てた成果と言えるだろう。

 

さて、今回、石油の禁輸反対に働きかけたのがロシアのプーチン大統領だといわれているが、実は、プーチン氏を北朝鮮危機の「フィクサー」から「プレイヤー」にしたことこそが、金正恩氏が得た最大の「成果」だと私は考えている。

プーチン氏の手足となって動く組織に、「ロシアン・マフィア」がある。私は彼らと接点があった。

ドバイ最大の銀行、エミレーツNBD。石油のビジネスをしていた当時、私も証券を作るためにこの銀行を利用していた。同銀行に口座を作った個人個人に「オフィサー」という銀行担当員が付くのだが、私のオフィサーは、何人かのロシアン・マフィアも担当していた。

私が作る証券は250億円くらいで「こんな大きな証券作るもんは、他にはおらんやろ」と自信満々でいたのだが、ある時そのオフィサーに、ロシアン・マフィアの作っている証券の金額を尋ねると「今回は小さくて、5000億円です」というから驚愕した。バンクドラフト(送金小切手)も1兆円という額面。常識の範疇を越していた。

あまり知られていないが、06年ごろ、そのロシアン・マフィアが販売する核物質が世界中で高額で取引されていたことがあった。私もその市場に参入しようと彼らに接触した。結局、参入障壁が高くて核物質の取り扱いは諦めたのだが、その時に彼らが教えてくれたことがある。

日本では中国がアフリカへ多額の開発投資を行っていることが報じられているが、コンゴやガーナに対して中国以上に資本投下をしているのが、ロシアン・マフィアだということだ。

ロシアン・マフィアは紛争地の敵味方両方に武器を供給する。そして紛争が終わるとそこから武器を回収し、リサイクルして次の紛争地へと運ぶのだ。AK-47は頑強なアサルトライフルだが、プリンター商売と同じで、カートリッジと弾丸はほとんどロシアン・マフィアによって作られ供給されている。人の命や政治信条よりビジネス。これが国際社会でのマフィアの発想である。

表に見えないところで強い影響力を世界に行使しているロシアンマフィア。当然、この北朝鮮危機においても暗躍している。