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旅と遍路は、人を乙女にする

そして僕は四国遍路を巡る ②
白川 密成 プロフィール

僕の遍路マイ・ルール

6月5日。

昨日は儀式の後、祝賀会となり、そこでも司会を務めた。宇和島駅近くの駅に宿泊。グズグズしていたら結構いい時間になってしまったが、近所にあるお寺、龍光院(四国別格20番霊場)をお参りすることにした。このお寺は、弘法大師とも縁が深く、思わず足が向かう。偶然このお寺は、仏木寺の新住職「あきさん」の実家であり、今はあきさんのお兄さんが住職を務められている。四国には八十八ヵ所以外にもたくさんの巡拝、聖地巡礼があるのだ。

ふとポケットの中にあるホテルのキーを眺めていると、部屋番号は「619」。僕の誕生日は6月19日なので、「この遍路の始まりが、僕の新しい誕生日になるのかな?」などと、こじつけに近いことを考えたりする。旅と遍路は人を乙女にする。

部屋のキー。写真:著者提供

じつはこの時まで、ここから車で数時間かけ徳島の1番札所に行きお遍路をはじめるか、宇和島駅から比較的近い、愛媛最初の札所である40番札所、観自在寺(かんじざいじ)からお参りをはじめるか、とても迷っていた。しかし、そんな時、師事する高野山の僧侶から頂いたメールの文面をふと思いだし、自分の住んでいる愛媛、そして「今」この場所から、遍路を始めたいと決めた。そのメールの言葉は、ひと言、「足下をみつめよ」だった。

 

遍路を始めるにあたり、仏教の戒のひとつである不殺生(ふせっしょう、生きものを殺さないようにする)、不帰綺語(ふきご、飾らない本当の言葉で話す)、不悪口(ふあっく、悪口のような思いやりの欠けた言葉を発さない)などの十善戒(じゅうぜんかい)に加えて、いくつか「マイ・ルール」を決めることにした。なぜだか数年前に遍路を始めると決めた時から、自分で決めた小さなルールにしたがって、遍路をしたいと思っていた。

・できる限り、怒らない。
・道中でも、お寺でも「お先にどうぞ」の精神で、あせらない。ひとに道を譲る。
・体を清潔にし、荷物を整理整頓する。
・小食。
・「自分のもの」ではないものを、大事にする。(宿泊の部屋、お寺、など。)
・早く寝る。

iPhoneのメモアプリにそんなことを書いている自分がいた(これがすべてではない)。考えてみると「お坊さん」である僕が言ってしまうのは、少し情けないかも知れないけれど、ほとんど自分が「苦手」とすることであった。僕は日々、わりと怒り、自分を主張し、時に食べ過ぎていた。そんな自分をどこか「シフト・チェンジ」とまでいかなくても、「調整」したくなっているようだった。

仏教は「道徳」のみを語り、勧めるものではない。しかし、一見、安直な道徳のようにみえるシンプルな行動規範が、深い仏教思想に繋がり、また自分の身を守ってくれるような気がしている。

「もしもかれが荒々しいことばを語り、他人を苦しめ悩ますことを好み、獣(のごとく)であるならば、その人の生活はさらに悪いものとなり、自分の塵(ちり)汚れを増す」
(『スッタニパータ』275)

最古ともいわれる仏教聖典、『スッタニパータ』の言葉をみても、いつも頭を抱える僕であるけれど、少なくても遍路中は小さな修行にチャレンジしたい。