人工知能がつくった作品に、はたして「著作権」は認められるか?

本気で考えるべきロボットの権利と責任
金井 良太 プロフィール

「人工アーティスト」が生まれる未来

金井:最後に、これまでに見たAIによるクリエイティブな作品で一番印象的なものを教えてください。

エリオット:AIが単独で作ったのではなく、人間との協同制作ですが、アーティストで映画作家のローレンス・レック(Lawrence Lek)のジオマンサー(Geomancer)です。

ロンドンに拠点を持つアーティストで、普段はコンピュータゲーム風の映像を制作しています。東洋が発展し中国のような国が重要度を増していく未来像を「中華未来主義(sinofuturism)」というのですが、レックはそのコンセプトに関心を持っています。

ジオマンサーは2065年の未来のシンガポールを舞台とし、最初のAIアーティストになることを夢見るAIについての45分ぐらいの映画です。

〔PHOTO〕Geomancer
〔PHOTO〕Geomancer
〔PHOTO〕Geomancer

この映画はクリエイティビティとAIというテーマと深く関連しています。レックのアプローチが素晴らしいのは、AI研究者との協力で、映画内での映像をもとにニューラルネットワークをトレーニングして映像を生成させているところです。

こうすることで、映画の中でAIが夢をみる場面があるのですが、AIが生成した映像と元の映像とでスタイルが違うので、そこの区別がつけられています。この作品は、もともと人間らしいと考えられていたクリエイティブなことをAIがしたいと思う、という設定がコンセプトとして非常に強力です。

金井:AIがモチベーションや想像したいという情熱を持つというのは面白いです。

エリオット:まだ、実現には時間はかかりそうですが、そういった目標をもっているアーティストもいます。そこからインスピレーションを引き出すこともできるでしょう。

金井:そうすると、AI研究の究極の目標は本物の「人工アーティスト」を作ることかもしれないですね。

エリオット:そうですね。技術面にも強く、コンセプトも印象的で、人間では真似できないような作品をつくるような人工アーティストです。

金井:こういう話をしていると、AIは実際に何か感じることができるようになるのかということも気になります。

人間には内面的な感覚がありますが、AIで使っているようなニューラルネットワークが主観的な感覚を生み出すのか、そして美を感じたりすることができるのでしょうか。AIが色合いの美しさに感動したりすることはあり得ると思いますか。

エリオット:それは妥当な疑問です。すでに機械が巨大なデータの中で何を美しいと判断するかについての研究はあります。

金井:本当にそんなことがあるのですか?

 

エリオット:ベル研究所にミリアム・レディ(Miriam Redi)という人がいます。彼女は機械が美をどのように捉えているかについて研究をしています。その前は、ヤフーの研究所でクラウド・ビューティ(CrowdBeauty)という美しい写真を見つけ出すアルゴリズムの開発をしていました。

金井:ここでの美しさというのは、人間の価値観を学習データとして機械に学ばせたということなのでしょうか。

エリオット:そうとも言えます。レディの研究では、1万枚ほどのフリッカーの画像データをもとにデータベースを作り、クラウドソーシングによって画像の美しさをたくさんの人に評価してもらいました。

それを元に、構図の独創性や、色の配置、光のコントラストといった画像の特徴を抽出し、それを美しさの評価とともに機械学習のフレームワークに入力することで、未見のフリッカーの画像についても美しさの評価ができるようになっていました。

金井:なるほど。そのやり方でならば、人が美しいと感じるものの特徴を見つけ出すことはできそうですね。今日は、クリエイティブな世界でのAIの活用について紹介してくださりありがとうございました。

(了)