人工知能がつくった作品に、はたして「著作権」は認められるか?

本気で考えるべきロボットの権利と責任
金井 良太 プロフィール

AIが「意図」を持つ日

金井:となると、AIによるデザインの自動生成も、実際はまだまだ人間の手の内にあるということですね。

エリオット:クリエイティブなAIというのは、まだまだ人間と機械の協同作業と捉えるべきだと思います。その中における人間の役割が少しだけ変わってきたのかもしれません。

金井:これは、AIが現時点では完全自律的になっていないため、自分から何かを始めることができないからでしょうか。

でも、そのうちAI自身が自分で作品を作ってブログで公開するなんてことをする可能性はあるのではないでしょうか。一度そうなれば、もっと人間のようなAIが生まれて、クリエイティブなプロセスを全て担うようになるのではないでしょうか。

エリオット:その可能性はありますが、それでも、AIに週に7回はブログを更新するようにと命じるのは人間かもしれません。

AIが「じゃあ今日はブログに何か書こう、明日は猫についての歌を作ろう」などと自分で決めるようになって、そういったAIの行動計画に人間が気づいていないような状況になったら面白いだろうと思います。

金井:つまり、AIが自分で意図をもって作品を作り始めるということですね。でも、そうなったら心配した方がよいかもしれません。

クリエイティブな世界でのAIの使い方ですが、アーティストは一般的にどのような反応をしめすのでしょうか。興味津々なのか、脅威に感じるのか。

AIの話題になると、将来、仕事がなくなるという話がでてきますが、こういう話はクリエイティブ業界にもあるのでしょうか。AIのことが嫌いで、AIの作ったものは本物のアートではないといったことを言う人もいるのでしょうか。

〔PHOTO〕iStock

エリオット:実際のところ、アートとAIのコミュニティでの反応はさまざまです。筆で絵を描いたり彫刻をしたりする伝統的な技術を使うアーティストもいますが、彼らはVRやAIなどの新しい技術を使うことにはあまり興味はなさそうです。

そうはいってもロマン・リプスキ(Roman Lipski)のような風景画家が機械学習の研究者とコラボレーションをしている例もあります。リプスキの場合は、自身の絵画をもとにAIを訓練して、自分自身のスタイルの新しい作品を生成させています。

伝統的なアートとは別に、新しいテクノロジーを取り入れていくメディアアーティストたちは特にAIに強い関心を抱いています。AIがメディアを賑わして、フェスティバルなどの文化的なイベントが増えてきているので、そういった関心に活動を合わせていく必要を感じているようです。

現代アーティストの役割は、現代の課題や社会全体を観察し解釈するという側面があるので、AIの倫理的な問題や脅威についても関心が高まっています。

このような社会的な課題を扱うアーティストの中には、政治的テーマを扱った作品を作る芸術家がいますし、監視カメラの情報の利用の仕方や、データが潜在的に含んでいる偏見などの倫理的問題について関心を持っている人もいます。

それから、AIが作り出した芸術作品についての意見の違いも興味深いです。画風変換は自分の写真をゴッホの作品風にしたりすることができて人気がありました。

テックコミュニティではたくさんの人が試し、結果を楽しみ、これはある種のアートではないかと感じていたのですが、アートの世界の人はそれほど面白いとは感じていなかったようです。

何千人もの人が自分の写真を時間もかけずにアルゴリズムで変換できてしまうものであれば、そこにはコンセプトを生み出すための思索もなく、独創性があるわけではないからです。そういう意味で、アーティストは画風変換にイノベーションとしての価値を感じていませんでした。

 

金井:この考え方というのは、芸術は自動化されてしまうと、それは創造ではなくなってしまい、価値をもたなくなるということでしょうか。

エリオット:創造的な過程の一部を自動化するメリットとしては、人間には独特のやり方や社会や文化の規範があるので、アプローチの仕方に限りがありますが、アルゴリズムはそういった制約がないのが特徴です。

だからこそ、画像や文章についても、人間が考えつかなかったような新しい可能性を見つけ出す可能性があります。アルゴリズムの持つそういった人間らしくない側面はメリットです。