人工知能がつくった作品に、はたして「著作権」は認められるか?

本気で考えるべきロボットの権利と責任
金井 良太 プロフィール

AIが700万種類のパッケージを制作

エリオット:AIが作った作品の著作権や作者が誰なのかという問題は、まさに議論が活発になっています。著作権法は国によって違いますし、イギリスなど一部の国では法的に、AIによって作成された作品の著作権を認めています。

この場合、著作権は「その作品を生み出すために必要な手配を行った者」(Copyright Designs and Patents Act 1988)に付与されることになっています。

ドイツやスペインのような他の国では著作権保護は人間によって制作された作品のみに限定されているようです。米国ではまだ明確な答えを出しておらず、そうした姿勢もまた理解できます。

誰の著作であるかと考え始めると、アーティストなのか、アルゴリズムを最初に開発した人なのか、アルゴリズム自体なのかわからなくなります。こういった著作権の問題は、ロボットの権利にまつわる責任や倫理という観点からも疑問がでてきます。

金井:ロボットの権利ですか? ロボットが音楽を作ったら、その著作権をロボット自体が持ってしまうという話でしょうか。

 

エリオット:まさにそういう話ですし、その先のことも考えられます。AIがさらに高度化していくと、AI自身が権利と責任を持つことも真剣に考えなければなりません。

欧州議会では、企業が「法人格」をという法的なステータスをもっているように、AIにも「電子人格」のようなものを付与することを検討しています。まだ何も確定しているわけではないですが――。

現在メディアは、AIが創造的な作品を作ったときにAIを作者として報じています。最近では、チョコペーストのヌテラ(Nutella)の広告キャンペーンがありましたが、オグルヴィ・アンド・メイザーイタリアという代理店に依頼して、700万種類のパッケージデザインをAIが作りました。

金井:そんなにたくさんですか!

エリオット:はい、本当にすごい数です。これがニュースの記事になると「AIが700万種類のパッケージデザインを作成(algorithm comes up with seven million different packaging designs)」と報じられるわけです。

その場合は、関わった人が誰であったかなどは述べられてはいません。代理店が手がけましたが、このアルゴリズムの考案者が誰であったかなどは報じられていません。

このような作者や著作権の問題を、我々が社会としてどのように認識しているのか、今後の法整備などに影響してくるので注目すべき点でしょう。

金井:これは面白い事例ですね。ヌテラの場合は、結局、パッケージのデザインをした作者は誰だったかという結論は出ているのですか?

エリオット:この件については、特に結論をだすような議論があったわけではありません。代理店がメディアに取り上げられはしましたが、アルゴリズムに注目されます。これはこれまでAIをデザインに使うということがなかったためなのでしょう。

また、「アルゴリズム」とか「AI」という言葉がタイトルに使われているにも関わらず、それが具体的にどういうアルゴリズムで、どういう仕組みなのかは報じられません。アルゴリズム開発者の名前もメディアの記事にはでてきません。

自分自身の体験からも、AIを創作に利用する場合にも、人間の果たす役割が現状では非常に大きいです。「このアート作品はAIによって作られた」「この音楽はAIが作曲しました」と言われても、実際のところは、このアルゴリズムをこういうデータセットで訓練するぞと決めている人がいて、アルゴリズムが作成したものを自分の好みで選んで最終的な結果として発表しているにすぎないのです。