人工知能が映画脚本を手がけ小説を書く時代の「創造性」とは?

アート分野はこんなに進んでいた
金井 良太 プロフィール

コミュニティづくりを通して

金井:ルバさんは、今ロンドンで創造的AIのグループを主宰されています。この集まりではどのようなタイプの人が集まっているのでしょうか。そして、どんな企画をおこなっているのでしょうか。

エリオット:このミートアップは去年の9月に始めました。最初は、創造的AIのテーマでのカンファレンスを考えていたのですが、このトピックに十分な関心があるのか確信がもてませんでした。

そこで、まずはミートアップから始めてみようと考えたわけです。すると、アートとテクノロジーを組み合わせたカンファレンスが次々とAIをテーマとして取り込むようになってきました。

その後、自分でアートとAIのカンファレンスをさらにもう一つ作るよりも、継続的なコミュニティをロンドンに作ることに意味があると考えるようになりました。

それを続けていくことで、1000人ぐらいのメンバーが集まりました。毎回のイベントに来る人は、毎回違うのですが、機械学習の研究者、アート系の学生、クリエイティブな技術者、イノベーションのコンサルタント、クリエイティブ業界でのビジネスに関わる人たちが主な参加者です。

一番最近のイベントではAIと建築をテーマにしました。そこでは建築家と機械学習の研究者が半分半分で、非常に成果のある議論ができたと思います。

金井:建築というのは面白いですね。建物のモデルのような建築デザインもAIでまるごと生成しようという人がいるのでしょうか。

エリオット:今回のミーティングではアリ・エスラミ(AIi Eslami)というAI研究者が参加しており、デザインの生成と最適化についての講演で、建物と製品のデザインについて話してくれました。

それからAIビルド(AI Build)というスタートアップからは、ダガン・カム(Daghan Cam)が来てくれて、自己学習をするロボットと3Dプリンターを使って、建築のフォルムを通常の方法よりもずっと速く構築する方法を紹介してくれました。

 

金井:非常に面白そうな企業や人たちが集まっていますが、このようなイベントグループを作ることでルバさんが実現したいことは何でしょうか。

自分自身でもクリエイティブなAIの会社を作ろうという考えなどもあるのか、あるいは、面白い人たちが集まるコミュニティづくりによって、分野を越えた面白い化学反応を起こしたいのでしょうか。

エリオット:それは良い質問です。私が目指しているのはコミュニティづくりを通して、アートやクリエイティブな業界と機械学習のようなテクノロジーの世界の橋渡しをし、異なる業界の協同作業を促進したいのです。

このふたつのコミュニティはお互いから学べるところがたくさんあります。クリエイティブ業界で働いていると、機械学習の最新の技術について学ぶ機会は限られています。

ビジネスの最適化においても機械学習がもたらす恩恵は大きいので、AIの最先端の話に触れることで製品開発やビジネスモデルに活かす上でも役立ちます。

このコミュニティでは、AIの会社から研究者を招いてAIで音楽や文章を生成したりするための研究について解説してもらっています。

反対に、アーティストやクリエイティブな業界でAIを作品に取り込んでいる人たちに、具体的にどのようにテクノロジーを利用しているか、そして技術的にどのような限界や課題があるのかなどについて話してもらっています。

最近のイベントでは、ロンドンの大手アートギャラリーであるテートからも人を招き、テートが毎年が主催するIK賞(IK Prize)というコンペについて話してもらいました。この賞は、イギリスのアートを楽しむためにデジタルテクノロジーを利用することを奨励するためのものです。

去年のコンペのテーマはまさにAIでした。 テートコレクションに所蔵されているイギリスのアートを見つけ出し楽しむためのテクノロジーを生み出すプロジェクトを募集していました。

受賞したのは、ファブリカ(Fabrica)によるリコニション(Recognition)という作品。これは、ジャーナリスティックな写真から、類似したテートコレクションの作品を見つけ出し比較するためのプラットフォームです。試してみると、とても風変わりで面白い組み合わせが見つかることもあります。

たとえば、車のシートの画像からは、ヘンリー・ムーアの「リクライニング・フィギュア(横たわる像)」が対応付けられています。これは、実際に見てみると確かに類似点がみてとれます。アルゴリズムが見出す類似性やエラーが面白いのです。

金井:これはいったいどういうアルゴリズムで実現されているのでしょうか。

エリオット:このアルゴリズムは、現代のフォトジャーナリズムでの写真とテートの芸術作品のマッチングをしています。その写真というのは、インドの田舎の路地の写真だとか、スペインのお祭りのシーンを撮った写真とかそういうものです。

テートコレクションの芸術作品には、人の肖像画や風景画や彫刻などの画像が入っています。この2つの異なる種類の画像のデータベース間で似たものを見つけて、並べることをしています。

金井:なるほど、そういうことでしたか。いろいろ試してみたくなる仕掛けですね。そこから、アートへの関心が高まるきっかけにもなりそうです。

【つづきはこちら:人工知能がつくった作品に、はたして「著作権」は認められるか?】