人工知能が映画脚本を手がけ小説を書く時代の「創造性」とは?

アート分野はこんなに進んでいた
金井 良太 プロフィール

アートにおける可能性は大きい

金井:日本では知られていないものも多いので興味深いです。ここまでいろいろなモノがAIで作れてしまうのは驚きですが、こういった作品は人間のレベルに達しているのでしょうか。

エリオット:個人的には、AI技術にはまだまだ改善の余地があると思っています。AIが生み出した作品として、生成された小説や脚本を見ても、まだ人間には遠く及ばないのは明らかです。

これは個人的な感想ですが。創造的AIのプロジェクトでメディアの注目を集めたものがいくつかあります。

例えば、短編映画のサンスプリングでは、AIが映画の脚本を書きました。しかし、実際の映画は、意味不明なところが多々あります。役者は普通の人だったら決して言わないような、社会的には場違いで文脈に合っていないセリフを喋っています。

このプロジェクトは、AIが初めて脚本を書いたという点では面白かったです。内容にも斬新さや独創性を見出した人もいるでしょう。しかし、芸術作品として鑑賞することはできても、毎日見るには堪えられないものです。

もっとクオリティの高い文章や詩や映画を作ろうとしたら、まだまだAIシステムの研究開発が必要だというのが現状です。

金井:もしかしたら、AIで創作する対象としてアートというのは抽象度がちょうど良いレベルにあるのかもしれません。AIによって生成された非日常的な視覚イメージや音でも、アートとしては人間は理解することができるのではないでしょうか。

AIに車のエンジンをデザインさせたら、きっとそのエンジンは十分な精密さを持たないために動かないでしょう。しかし、もう少し抽象度の高いものならば、人間の感覚にとって興味深いものをAIは生成しそうです。

そういう意味では、AIをクリエイティブに使おうとしたときに、アートは適した対象で、人間からみて驚きがあって面白いものが作れてしまうのではないかと思います。

エリオット:まさにその通りです。AIをアートに取り入れる可能性は大きいです。

もちろん、AIがたまたまアートを生み出してしまうようなことはあるでしょう。たとえばグーグルのディープドリームがパゴダやネコを普通の画像の中にたくさん作り出してしまうのもその好例です。

 

金井:たしかにディープドリームはアートな感じがあり、サイケデリックなイメージです。なぜ、あのイメージは人間の興味を引くのでしょうか。

エリオット:それは確かに気になる問題です。いくつか理由は考えられますが、ひとつはニューラルネットワークが人間にとって馴染みのある形を写真の中に作り出してしまうからではないでしょうか。

元の写真が単に顔だけの画像だったとしても、その中にパゴダのような建物の形や、犬や猫の姿といった人間にとってわかりやすい形を見出します。

ディープドリームの創り出す画像は、シュールレアリズムのようでもあり、果物や野菜で肖像画を作ったジュセッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo)のような芸術家を彷彿とさせます。こういったところで、ディープドリームは独自の芸術運動を生み出したかのようにみることもできます。

アルチンボルドの作品〔PHOTO〕gettyimages

人がディープドリームに惹きつけられるもう一つの理由として考えられるのは、色彩が明るく注意を引くところでしょう。一時的な効果かもしれませんが、ディープドリームのような作品の生み出す新規的価値はそのあたりにもあるのではないでしょうか。