人工知能が映画脚本を手がけ小説を書く時代の「創造性」とは?

アート分野はこんなに進んでいた
金井 良太 プロフィール

クリエイティブ業界でAIはいま…

金井:そういう経緯があった上で、ロンドンでのクリエイティブAI(London Creative AI)を設立したということですか。

エリオット:そうです。そのプロジェクトのあとでロンドンに移り、イベントやハッカソンを企画・運営して、アートにイノベーションを持ち込むにはどうしたら良いかを模索し始めました。

そのときに、コンピュータ・ヴィジョン(画像認識技術)やAI技術について教えてくれた人がいたのです。それで、一気にAIに興味を持つようになりました。アートとテクノロジーで最高にかっこいいものは「コレだ!」と感じました。

この分野のことを勉強し始めたのは2年前ぐらいですが、そのときちょうどグーグルのディープドリーム(Google Deep Dream)が登場したのです。

その直後にドイツの研究者が画風変換(スタイルトランスファー)のアルゴリズムを開発しました(style transfer algorithms)。これを使うと、自分の写真をゴッホ風に変換したりできるのです。

そのころ、テックコミュニティでも一気に盛り上がり、一般の人たちも関心を持っていたと思います。それから、ベンチャーファンドでも一時期働き、AIスタートアップの調査をしたことで、AIについての知識を得ることができました。

 

金井:投資側の人でもあったのですか。

エリオット:ええ、モザイクベンチャーズというシリーズA投資を中心としたファンドです。だいたい、スタートアップ1つあたりに100万ドルから1000万ドルぐらいの規模の投資をしていました。

AIはとても競争の激しい業界で関心も高いので、当時は本当にたくさんのアーリーステージのスタートアップの調査をしていました。

金井:なるほど。このスタートアップを調べ上げる経験があったからこそ、AIの業界で起きていることに詳しいのですね。

エリオット:はい、そうです。

金井:あるとき、AIの応用について、ルバさんがお書きになったネットの記事を読んだことがあります。それは投資家の方と一緒に書いていたので、アーティストと投資家が一緒に記事を書くのは変わっているなと思ったのを覚えています。

しかし、このアートのスタートアップでの経験と、ファンドでのAIスタートアップの調査という経験の組み合わせを知って、やっと理解できました。

もしかしたら、投資する側の経験から、AIのアプリケーションとしてどういったものに可能性があるのかというのは考えてきたのではないかと思います。

AIブームで、面白い研究結果がたくさんでてくるので多くの人が熱狂していますが、今あるAI技術を本当に意味や価値ある応用をすることは簡単ではありません。

もちろん、ビジネスモデルも実にたくさんありますが、よく見かけるのはデータ分析や画像分析の文脈での応用です。その点、AIのクリエイティブな側面というのは応用を考える上で1つの軸となりそうです。

創造的AI(クリエイティブAI)という分野では 、新しいAIの応用が生まれてきそうでしょうか。創造的AIに特化したスタートアップがあったとしたら、どのようなアドバイスをしますか。

エリオット:確かに、あらゆる業界でAI導入への関心が高まっています。これはクリエイティブな業界でも同じです。私の拠点であるイギリスでは、クリエイティブ業界というのはここ10年ほどの間、もっとも成長の早い領域と言われています。

イギリスは自国のアートやファッションや音楽に誇りを持っています。そこで、クリエイターやエージェントや音楽プロデューサーやアーティストといった人たちが、自分の作品やビジネスにAIと取り入れようと動いています。

今話に出たクリエイティブな分野にAIを持ち込むことの記事(AI in the creative disciplines)は、クリエイティブ業界でAIをどのように利用することが可能なのか見渡すような内容になっています。

一つの使い方は、検索的な使い方で、求めているイメージや商品や音楽をレコメンデーションエンジンを使って見つけ出す側での利用です。

もう一つは、商品を個人の好みに合わせて作りだすという使い方です。例えば、個人のデータを元に歌をつくりだすようなこともできます。