世界有数のビジネススクールが「家族企業」研究に注力するワケ

「所有と経営の分離」は本当に主流?
沈 政郁 プロフィール

家族企業研究はこうして発展した

しばらく家族企業と非家族企業の業績の差異を考察する研究が続き、平均的にみると家族企業の方が業績が高いことが判明するにつれて、研究の関心は徐々になぜそのような結果になるのかを解明する方向に向かうようになった。

ここでその全てを語ることはできないが、家族企業にも多様性があり、業績の差異が生まれる理由にもさまざまな要因が存在することが徐々に明らかにされつつある、とまとめることができる。

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世界的にみて家族企業が支配的な企業形態であることをうけて、学術的な方向での発展だけではなく実践的な方向でも発展がおこなわれてきた。それが各種の家族企業の研究センターである。

センターの目的はもちろん家族企業の研究を促進することではあるが、家族企業が抱える問題点に対してアドバイスや解決方策を提示することも大事な役割であると認識されるようになった。

この目的に沿う形で家族企業に関する事例研究が蓄積されてきているし、学術界と産業界が合同でおこなう家族企業をテーマにした研究会が定期的におこなわれてきた。

成功した家族企業がこれらの研究機関に寄附を通して家族企業の研究を発展させてきているケースも海外では珍しくないのである。

 

日本における家族企業研究の意義

ここでは家族企業の研究が発展してきた背景について話してきた。本稿を締めくくるにおいて、日本の役割を述べておきたい。センスの良い読者であれば家族企業の議論は日本の老舗企業と密接に関連していることを感じ取ることができるだろう。

今までの議論の中心が上場した企業を対象に展開されてきたので、世界的にも未上場の世界での家族企業の研究はまさにこれから始まろうとしている段階である。そこでの家族企業の議論は、日本の老舗企業の議論とまさに直接に繋がる話である。

また、今までの議論は効率性を中心にした企業業績や企業成長を考察する研究がメインであったが、最近になって企業の存続性や永続性も重要な要素ではないかという議論が展開されつつある。

まさに、日本が長い歴史をかけて作ってきた伝統が、これからの家族企業の研究の発展に大きく貢献できる可能性が高まっているのである。