世界有数のビジネススクールが「家族企業」研究に注力するワケ

「所有と経営の分離」は本当に主流?
沈 政郁 プロフィール

家族企業と非家族企業、どちらが業績高い?

1999年の論文の後を追って、いくつかの論文ではヨーロッパとアジアを対象にして分析の緻密化を行う方向で研究がすすめられ同じような結果が得られた。

ますます世界的にみると所有と経営が分離されていない家族企業が支配的な企業形態であることが明らかにされたのである。このような流れを後押しする論文が2003年に"Journal of Finance"に掲載される。

この論文のタイトルは"Founding-Family Ownership and Firm Performance: Evidence from the S&P 500"というものであり、家族企業と非家族企業ではどちらの業績が高いのかをアメリカのS&P 500社を対象にして分析をしたものである。

得られた結果はアメリカでも家族企業の数が少なくなく、S&P 500社のうち約3分の1が家族企業であり、さらに家族企業の方が非家族企業より会計の業績(ROA)でみても市場の評価(Tobin's Q)でみても業績が高いというものであった。

 

この論文は家族企業の研究の発展に大きく貢献したと言える。前述のとおり、学術の世界ではアメリカを中心にして動いてきた経緯があり、その流れで所有と経営の分離を当たり前のように考えていた。

しかし、それは間違いであり、アメリカとイギリスをのぞくと家族企業は世界中で代表的な企業形態であること、さらにアメリカでも家族企業の数は少なくなく業績が高いことが判明されたのである。

アメリカでこの結果が得られたことで、世界中で家族企業の研究が活発になっていったのである。

平均的にみると家族企業の業績は悪くない

2003年の"Journal of Finance"の結果を受けて、世界中で家族企業のデータの構築が始まり、色々な国で家族企業と非家族企業の業績の比較が行われた。

得られた結果は完全には一致していないが、平均的にみると家族企業の方が非家族企業より業績が高いということであった。筆者の家族企業の研究はまさにこの流れに沿ったものである。

2005年の初頭に、日本でも家族企業の研究ができるのではないかと思い、データを調べていった。この過程で、日本の凄いところは資料の形で膨大なデータが古くから存在することであると改めて実感することができた。

多くの海外の家族企業の研究はデータの入手制約からある期間を区切って分析するのが主流な方法だったが、日本の場合有価証券報告書が戦後株式市場が再開された後から作られていて、時間と労力をかければ全ての上場企業のデータを1960年から構築できるのであった。

このようなデータを作ることができれば世界的にみても類をみないデータであることから、時間と労力をかけてデータを構築して分析をおこなった。この詳細な結果は次の機会に述べることにする。