「稲田朋美」とは何だったのか?もてはやされた「保守政治家」の凋落

テキストマイニングで読み解く
後藤 和智 プロフィール

テキストマイニングで見るその役割

それでは、稲田氏の言論はどのように変容していったのでしょうか。

本節では、それをテキストマイニングと呼ばれる手法で読み解いていきます。テキストマイニングとは、文章を単語などの形態素に分解して、それで得られたデータをもとに分析を行う手法です。

今回は、稲田氏が『正論』と『WiLL』、及び他のメジャーな月刊誌である『諸君!』『Voice』『文藝春秋』に寄稿した文章を対象に分析を行います(短い身辺雑記的エッセイは除く。なお、なおテキストデータについては、筆者自身が国会図書館から取り寄せた記事のコピーを自身でOCRにかけたものを使用している。英単語は全角・小文字に変換。形態素解析に用いたのは付録に提示する辞書を用いたMeCab)。

対象としたのは次の記事です。

この中で、記事を以下の時期に分けてみました。

時期1:政治家になる前
時期2:政治家になった後の小泉政権期
時期3:第一次安倍政権〜麻生政権期
時期4:民主党政権期
時期5:第二次安倍政権期

分析には、フリーのテキストマイニングソフト「KH Coder」を使いました(KH Coderについては、公式サイト 及び樋口耕一『社会調査のための計量テキスト分析——内容分析の継承と発展をめざして』(ナカニシヤ出版、2014年)を参照されたい)。分析に用いた単語は、全体での出現数が60以上の自立語の内、KH Coder上で「名詞B」などのB分類(ひらがなだけの単語)に分類されない単語100単語です。

まず、対応分析を用いて時期と単語を同一平面上に布置してみます。

図1

この図から軸の特徴を見てみると、第1主成分(横軸)は、右側(正の方向)が政治・外交に関する実務的なもの、左側(負の方向)は裁判に関するものと言うことができそうです。

また第2主成分(縦軸)は、上側(正の方向)は政治・政局関係、下側(負の方向)は、南京大虐殺や教育基本法改正などの保守思想関係と言うことができるでしょうか。

第1期の近くに布置されたのは、裁判に関する用語でした。それが第3期になるにつれて、右下のほうにずれていくことが分かります。

これは、前の自民党政権期における「政治家兼論客」としての稲田氏が、自民党の内部の人間として保守政党とは何かということを問う立場にあったということが言えそうです。

 

しかし、第4期、すなわち民主党政権期になると一気に上の方向に移動してしまいます。

これは稲田氏が保守論壇にとっても、また2010年の本会議で代表質問に立ったことを考えると自民党にとっても、民主党及び同党による政権批判の急先鋒として活躍していたことが挙げられます。

しかし第5期の現在の自民党政権になると、概ね原点に近いところに落ち着きます。第5期にあたる記事は、かつての百人斬り裁判の振り返りや、自身の生い立ちに関するものが中心になっているのが原因でしょう。