「燃料を海に捨てろ!」9・5JAL機炎上 緊迫現場の「実況中継」

空の密室でなにが起こっていたのか
週刊現代 プロフィール

子供と夫を思い浮かべて

正午前、JAL006便は着陸態勢に入った。小林氏はふとこんなことを思ったという。

「『シートベルトをしっかりと腰の低い位置でお締めください』というアナウンスが流れると、家を出る時のことを思い出して……。ゆっくりと子供(0歳)の寝顔も見たし、主人は早朝の出発にもかかわらず起きて、『いってらっしゃい』と挨拶をしてくれた。

万が一、何が起きても後悔はしない。主人が起きてくれたことに感謝しよう、そう自分に言い聞かせました」

乗客たち233名が、それぞれに家族や大切な人の顔を思い浮かべていた。機内は重苦しい沈黙に満たされ、1基だけとなったエンジンと風を切り裂く機体の音だけが響きわたる――。

 

当初、トラブルの原因はバードストライクと発表されたが、実際はそんな単純な事故ではなかった。JALは発表をすぐに撤回したが、事故原因はまだ何もわかっていない。

国土交通省は事故翌日に、今回の事故を大きな事故につながる可能性のあった「重大インシデント」と認定した。

なぜエンジンが止まったのか。JALの機体運営に原因があると指摘する専門家も多い。JALの元パイロット・杉江弘氏がこう指摘する。

「JALでも機体の整備を外注することがあります。その際、台湾やシンガポールの整備会社に発注することもある。大きな整備は、たしかに自社で行えばコストがかかります。しかし、コスト削減を追求するあまり、整備の質が落ちているとしたら本末転倒です」

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そう言って、杉江氏はある資料を取り出した。国交省が公表した「航空輸送の安全にかかわる情報」(平成28年度分)だ。

「'16年度に発生した航空機の安全上のトラブルは990件。近年、右肩上がりに増えているのですが、中でも恐ろしいのが、ヒューマンエラー(人為的ミス)の件数が2年前に比べて、激増していることです。運航乗務員(パイロット)によるエラーは'14年度が82件で、'16年度は84件と微増です。

ところが、整備従事者のエラーは'14年度に86件だったものが、'16年度には119件に急増している。現在の日本の航空会社が抱えている問題は、『整備の問題』と言い換えても過言ではありません」