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ロヒンギャの悲劇…男は虐殺、女はレイプされ、村は焼き払われた

スー・チー氏がはじめて公式声明
大塚 智彦 プロフィール

美辞麗句、弁明の終始に失望感

「直面する危機的状況を克服しなければならないが、それは簡単なことではない。(第2次世界大戦後)70年間和解と平和を求めてきたミャンマーだが、この政府はまだ誕生してから18ヵ月しかたっていない。若く、壊れやすい政府なのだ」

「テロリストには法に基づいて治安部隊が対応している。人権侵害は非難されるべきだが軍は行動規範に従っている」

「平和を築き維持しなくてはならないが、この平和プロセスに国連など国際社会の協力を求めたい」

19日の演説でスー・チー顧問が「和解と平和」の他に強調したのは、政府や軍の立場を擁護した「言い訳」や「弁明」だった。

「我々は対立ではなく調和を求めている」「否定的要素を減らし、肯定的要素を推進したい」などと、演説の随所にちりばめられた「美辞麗句」は、故郷を捨てて命からがらバングラデシュに脱出したり、家族や知人を殺害されたロヒンギャの人々には空疎な言葉の羅列にしか響かなかっただろう。

 

演説の内容を伝える各国メディアも手加減なく厳しい論調で演説内容を即座に反論した。

「ロヒンギャの人々には救援、支援機関などへのアクセスが確保されているというが、それは事実ではない」

「ロヒンギャの人々には国民と同じ自由があるというが、教育、医療、福祉などあらゆる均等な機会が宗教ゆえに制限差別されているのは公然の事実」

コフィ・アナン特使などによる国連の調査を受け入れる用意があることを示唆したり、バングラデシュに逃れた人々の難民化の検証プロセスをすぐにでも始める用意があることを明言したり、外交団などの現地訪問・視察の機会を設け、共に解決策を探ろうということなど、今後の問題解決にある程度の道筋をつけたことは「進展」といえなくもない。

しかし演説、つまりスー・チー顧問のロヒンギャ問題に対する姿勢に関しては、「精神論、理想論に終始」「きれいごとばかりで実態を直視していない」「結局は自らの立場、政府を正当化しているだけ」などと否定的な評価が大半である。

「国内に優先して取り組む問題がある」として国連総会を欠席してまで臨んだ演説、国民そして国際社会へのメッセージにしては、「期待」よりも「落胆」そして「失望」が勝ったと言わざるをえない。

民主化運動の旗手だった在りし日の、あの凛とした語り口とは異なり、今回の演説は権力者のスピーチの側面が強く、国民に寄り添って正義の実現に挑むという「戦う孔雀」の片鱗を垣間見ることはできなかった。

当時と全く同じなのは、再会することが叶わず死別した英国人夫の誕生日に贈りあったといういわれがある、美しいバラの髪飾りだけだった。