わが家の愛犬事情から、獣医師たちの未来を憂う

加計学園騒動を今あえて考える(1)
楡 周平 プロフィール

こんなに治療費が高いなんて…

かつて、犬は「友達」と言われていたように思うが、今や「家族」である。

いや、実際私にしても愛犬は家族以外の何物でもない。小学生の頃に犬を飼ったことがあるが、当時とは愛犬に対する感覚が明らかに違う。

この違いは、外飼いから室内飼いに変わったことに起因するものだろう。

二十四時間、三百六十五日、生活空間を共にしていれば、もはや友達にあらず。家族という感情を抱いて当然だからだ。

 

さて、そうなると些細な異常にもすぐに気がつく。下痢をした、餌の食いが悪い、どうも様子がおかしい……となればすぐ動物病院に走る。

尾籠な話で恐縮だが、実際、我が家の犬も、迎えたひと月目に下痢をした。生後三ヶ月の子犬である。尻を汚し、悲しそうな目で飼い主を見つめながら体を震わせている(ように思えた)愛犬を見ていると、「まさか、死ぬのではあるまいか」という不安に襲われる。

家人は「早く病院に連れて行かなないと」と半狂乱だ。

「病院ったって、こんな深夜にやってる動物病院があんのか?」

「あるわよ。二十四時間やってる病院が」

そこで、深夜の東京を車に愛犬を乗せ、動物病院に駆け込んだわけだが、本当に時代は変わったものだと、そこから先は驚きの連続だった。

なにしろ、いきなり血液検査だ。詳細は忘れてしまったが、血糖値とか、腎機能だとか、検査項目は人間と全く同じ。点滴を打ち、薬を処方されと治療が施される間にも、患者(?)はひっきりなしにやってくる。大都市東京とはいえ、こんなに緊急を要する犬猫が世間には溢れているのかと驚いたが、治療費を支払う段になってまたびっくり。なんと、四万円以上もの請求である。

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はて、犬ってこんなに簡単に体調を崩すもんだったっけ。昔飼っていた犬は、十三年生きたけど、獣医にかかったのは、死ぬ直前の一度切りだったような気がするが……。

これもまた、外飼い、室内飼いの違いであろう。

昔飼っていた犬も同じように下痢をすることもあれば、体調を崩すこともあったに違いなかったろうが、触れ合うのは散歩と給餌の時くらいのもので、一日の大半は庭に置かれた小屋の中。飼い主と直接触れ合うことなく過ごしていたのだ。

そもそも動物は野生の中で生きていく能力を持っているわけだから、腹を壊しても自然治癒能力が備わっているはずで、放っておけば治るものと考えられていたようにも思う。しかし、今や「家族」である。家族が体調を崩したとなれば一大事、銭金以前の問題だ。なんとか健康を取り戻して欲しいという一念で、病院に駆け込むということになる。