ビジネスモデルの歴史的大転換に、日本だけが取り残されている

「大航海時代」に冒険者は見当たらず
野口 悠紀雄 プロフィール

大航海時代のようにフロンティアが広がる

世界経済の基本的潮流は、90年代の終わり頃から大きく変化し始めている。

これは、産業革命から続いてきた潮流の転換と捉えることができる。

IT革命と新興国の工業化によって、先進国では、製造業が顕著に縮小し、中心産業は情報関連産業へとシフトしている。先に述べたアメリカ時価総額ランキングのトップ5社は、すべて何らかの意味で情報分野での新しい技術革新と関連している。

働き方の観点から見ても、ルールどおりの規則正しい仕事でなく、創造力が重要になった。

日本は、まずこの段階で対応できなかった。

 

もっとも、GAFA企業はすでに大企業になっている。したがって、今後も変革を主導しつけるかどうかは、はっきりしない。

しかし、変化はGAFAで止まったわけではなく、それに続く企業群が登場している。

それらは、「ユニコーン企業」と呼ばれている。タクシー配車サービスのUberの時価総額は、日本円で6兆円を上回る。EVを製造するテスラは、時間総額でGMを上回った。民泊のAirbnbは、部屋数や時価総額でヒルトンホテルを上回った。

アメリカの学生の就職希望企業は、伝統的大企業ではなく、すでにこうした新興企業になっている。

さらに、ユニコーン企業の次の段階の事業体として、AI、仮想通貨、ブロックチェーン、量子コンピュータのなどに関連した新しい企業やプロジェクトが、水平線上に姿を現している。

産業革命以来の潮流が逆転する

産業革命以来の潮流は、大規模化、組織化であった。それが工場制工業において効率を上昇させる基本的な手段だったからである。

しかし、いま潮流は、大きく転換しようとしている。それは、優れた技術やアイディアが、極めて多額の収益をもたらすからだ。

実際、GAFAの全てが、このような革新的技術によって支えられている。例えばグーグルは検索エンジン、アップルはiPhone、フェイスブックは新しいSNS。アマゾンは、「お勧め」のシステム。

GAFAは、従来からある技術を使って、それを効率化することで利益をあげているのではない。新しい技術を用いて、従来からある事業のやり方を転換させてしまったのだ。

働き方の点で言えば、決められたことを規則正しく正確に行うより、新しいアイディアやビジネスモデルを生み出せるかどうかが重要だ。規律性より創造力が求められる。GAFAは、大企業病に陥らないように、様々な工夫をしている。

こうして、組織から個人へ、画一性から多様性へという変化が生じている。組織に雇われて安定して働く時代は終わった。それに代わって、個人企業やフリーランサーが重要になってきている。

これは、いまから500年くらい前の世界と非常に似た状況だ。

ヨーロッパでは、この頃、遠洋航海を可能にする技術が進歩した。それによって世界周航が可能になり、大航海時代が始まった

大航海時代にフロンティアが広がったように、いま、フロンティアが開けている。

ただし、広がっているのは、地理的な意味でのフロンティアではない。情報空間でそうなっている。それによって新しい可能性が広がっている。

ヨーロッパにおいて、1000年以上にわたって続いたカソリック支配からの解放が可能になったのと同じように、いま、大組織や国家からの解放が可能になりつつある。

こうして、産業革命以前の時代がこれからの時代のモデルになる。「歴史の循環」「先祖返り現象」が生じているのだ。(拙書『世界史を創ったビジネスモデル』参照)

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