女子中学生を「買春」子どもを食い物にする自称カウンセラーが増殖中

エビデンスなき療法に要注意!
原田 隆之 プロフィール

「公認心理師法」成立の意味

平成27年「公認心理師法」が成立し、今年9月15日にようやく施行された。これによって、初めて「心理師」が国家資格化されることとなった。

厚生労働省によれば、公認心理師とは、「保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって」、相談、助言、指導などの援助等を行うことを業とする者をいう。

心理学の課程を持つ大学は、目下公認心理師を養成するためのカリキュラム作りに追われており、間もなく大学での公認心理師の養成がスタートする。初めての国家試験も来年度中には実施される予定となっている。

これは確かに喜ばしい前進である。これまでは、民間資格であった「臨床心理士」やその他学会の認定する各種心理士などが主な資格であったため、あやしげな「心理カウンセラー」「○○カウンセラー」と区別がつきにくい状態であったからだ。

また、今後も臨床心理士の資格は存続するが、こちらはむしろ、「公認心理師」よりも取得が大変であり、大学院の所定の課程を修了しなければならず、そのなかには180時間以上の実習や修士論文の執筆も含まれる。

特に、後者については「科学者」としての力量を養成する目的があるが、それは最新の学術論文を読んだり、自ら研究を遂行して論文を発表したりする能力が、臨床心理士には必須だからである。

 

とはいえ、公認心理師や臨床心理士も、現状ではまだまだ心もとない状況にあるのも事実である。

たとえば、わが国ではいまだにエビデンスを欠いた心理検査や心理療法が人気を博しており、かつて私はそれを「ガラパゴス状態」と評したことがある。

世界に類を見ない奇妙な方法(箱庭療法、コラージュ療法など)、世界標準ではとっくに廃れてしまった方法(ロールシャッハ・テスト、描画テスト、ユング心理学、アドラー心理学)、科学的とは言えない方法(アニマルセラピー、色彩心理学)などが、独自の「進化」を遂げて跋扈している状況だからである。

このようなエビデンスを欠いた方法に頼っているようでは、公認心理師も臨床心理士も、似非カウンセラーと大差ないと言われても仕方がない。

重要なことは、専門家の好みや直観でアプローチを選択するのではなく、真の効果を証明する科学的エビデンスに裏付けられたアプローチを用いることである。

当たり前だが、これが相談者、クライエントに真の「益」をもたらし、「害」を最小限にする最善の方法だからである。

これまでは、サプリメントや健康食品同様に、心理療法も「効果」が曖昧で、玉石混交の野放し状態であった。

薬の効果を検証するために、二重盲検ランダム化試験が最適であるということもまた、前の記事で書いたとおりであるが、心理療法にも現在、二重盲検ランダム化試験は頻繁に行われ、エビデンスが蓄積されている。それによれば現在のところ、最も効果があるアプローチは、認知行動療法だとされている。

ただし、これは欧米での話であり、私がかつて日米それぞれの臨床心理学の学術誌に発表された論文4年分を調べたところ、アメリカではランダム化試験による論文が約9割を占めていたのに対し、日本の学術誌ではランダム化試験の論文は、1本も掲載されていなかった。

そして、ほぼすべてが事例の紹介に終始していた。これではサプリや健康食品の「利用者の声」と大差がないし、似非カウンセラーを批判できない。

今後、これら「心の専門家」が、さまざまな問題で心を悩ませている人々の役に立ち、真の社会貢献ができるようになるためには、科学的な研究と実践を重ね、エビデンスを重視するほかに道はないだろう。国家資格化されたからといって、それがゴールではない。

さらに、「心の専門家」にとってもっと重要なことは、何も資格や学位だけではない。それは何より他者に敬意を持って真摯に向き合い、他者を尊重するという根本的な態度や価値観である。

わずか数日の研修で資格を得て、「専門家」を称し、安易に人様の心の中に踏み込もうとする態度は、「心」に対する敬意や畏敬の念を決定的に欠いていると言わざるをえない。そのような人に「心の専門家」を標榜してほしくない。