女子中学生を「買春」子どもを食い物にする自称カウンセラーが増殖中

エビデンスなき療法に要注意!
原田 隆之 プロフィール

「専門性」や「効果」があいまい

これまでにも、自称「カウンセラー」「教育問題専門家」などが、その立場を悪用して子どもに近づき、同様の犯罪に手を染めることがあった。

また、犯罪に至るというのは極端なケースだとしても、こうした人々が、「専門家」として多くの人々の相談業務を行ったり、メディアで持論を展開したりしていることに、私はかねてから問題意識と危機感を抱いていた。

確かに、別に心理学の学位など持っていなくても、人の相談に乗るのがうまい人はたくさんいる。誰しも、悩みや不安をわざわざカウンセラーなどに相談せず、家族や友人に相談して、すっきりとした経験はあるだろう。

近所のおじさん、おばさん、お坊さん、スナックのママさんなど、人の話を聞くのがうまく、的確なアドバイスをくれる人たちはたくさんいる。むしろ、変なカウンセラーに相談するくらいなら、こうした「話の達人」に相談したほうが、よっぽど気持ちが晴れるということもあるだろう。

しかし、彼らは「カウンセラー」「専門家」を名乗ってはいないし、相談で金を取っているわけではない。

 

一方、専門家を称してそれを生業にする者は、そこには当然のことながら、それに見合う専門性がなくてはならないし、明確な「効果」を提供できなくてはならない。

風邪をひいたときに民間療法でネギを首に巻くのと、効果の証明された薬を飲むくらいの差がなければならないだろう。

多くの場合、自称「カウンセラー」の述べる「専門性」や「効果」はあいまいである。まず、専門性についてであるが、先にふれたように、プロフィール欄には多数のそれらしい専門団体の名称と資格が並ベられていることが多い。

しかし、ほとんどは聞いたこともないような民間団体ばかりである。ひどい場合には、自分が設立した団体で自分に資格を与えるような自作自演のケースもある。

また、たった数時間や数日の研修を受けただけで、「心理カウンセラー」の資格が与えられるような場合もある。これでは、料理教室や絵手紙教室と変わらない。3日間の料理教室に参加しただけで「料理人」を名乗ったり、絵手紙教室に出て「画家」を気取ったりする人がいるだろうか。

効果についても似たようなものである。「やる気スイッチマン」のサイトには、「やる気が出ました」「家族全員で泣きました」などと、感動エピソードのオンパレードであるが、これは果たして彼のカウンセリング効果の証明になるのだろうか。

効果のエビデンスとして、個人の体験がいかにあてにならないかは、前回『「95%が効果を実感」健康食品のあの数値に潜む落とし穴』で詳しく書いたので、そちらを参照していただきたい。

要は、都合のいい話しか載せていないことは間違いないし、場合によっては作り話かもしれない。誰もそれを証明できない。つまり「エビデンス(証拠)」ではない。

さらに、健康食品の場合と同じく、もっと大きな問題がある。それは、自称「カウンセラー」たちによる「害」である。健康食品にも肝障害や死亡リスク増大などの害があることを、先の記事では紹介したが、自称「カウンセラー」とて同じである。

今回のような性犯罪は言うに及ばず、効果のない「カウンセリング」に貴重な金と時間を浪費するのも害であるし、触れられたくない過去のトラウマに触れられて、精神的な症状が再燃したり、子どもの不登校がさらに悪化したり、ということがある。

たとえば、かつて新聞でも大々的に報じられたが、東日本大震災の後、「こころのケア」と称して、多くの心理学の専門家が被災地に赴いた。

その熱意には敬意を表したいが、そのとき、被災した子どもたちに不用意に被災時の体験を絵に描かせた「専門家」たちがいた。絵を描かせられた子どもたちは、その後、悪夢にうなされたり、恐怖体験がフラッシュバックしたりした。

アメリカの同時多発テロの後、被災者や被災者の救助に当たった消防士たちへの心理的ケアの際にも同様の失敗があった。それ以降多くの論文で、脅威的な体験の直後にその記憶を掘り起こすと、PTSD(心的外傷後ストレス体験)を招くおそれがあるということが報告されている。

したがって、これはストレスケアの際のタブーとして、専門家であれば知っておかねばならない必須の常識となっている。

専門家を称する者が、タブーとされている対処を不用意に行い、子どもたちの症状を悪化させたということは、いくら善意からの行動であったとはいえ、決して許されることではない。