40年前の「奇跡のフェラーリ」その修理にかかる手間ヒマとお金

日本屈指のメカニックが解説
平澤 雅信

駆動系のハブやドライブシャフト、エンジンやミッションはオーバーホールで対処し、消耗品のシールやガスケット、内部のベアリング類の交換を要するだろう。特にエンジンやミッション内部には、クランクやカムシャフト、ミッション内部のシャフトなど、1/100mm単位の精度を求められる部品が数多く存在する。

しかし、これらを新品で再調達しようにも、お金を払えば買える類の品ではない。内部の油膜切れで錆のダメージを受けていないか、シリンダーやヘッドは冷却水による腐食が進んでいないか、もしダメージを受けていたら修正が可能か、ひとつひとつのパーツの入念なチェックが必要である。

これぞ究極の「車道楽」

このように、分解組み立てよりも、部品の洗浄や測定といった淡々とした作業が時間の大半を占めるであろう。分解した部品の数々は、思いのほか場所を取るので、この車専用の作業スペースとして20坪は欲しいところだ。

 

プレッシャーは相当なものになるだろうが、この車に触れ、フェラーリの「ヒストリー」に参加できるメカニックは幸運である。

オークションの落札価格、手数料、輸送費、レストアに要する費用、これらを合計するとおそらく3億円を軽く上回る。仕上がるまでには、早くても2~3年かかるだろう。

必要なお金はケタ外れだが、レストア中の、まるで新車を製造しているかのような光景を時々見学に行き、製造から何十年後も電気自動車に混ざって元気に走る姿に思いを馳せれば、お金だけ出せば買える車では得られない充実感も唯一無二なものとなるだろう。

このデイトナを手に入れるということは、まさにクラシックフェラーリの楽しみかたの頂点、本物の道楽である。

平澤雅信(ひらさわ・まさのぶ)1968年生まれ。現在、アリアガレージ工場長。フェラーリ専門店で30年近く、フェラーリの整備・修理に従事する。レース・メカニックにも携わる。フェラーリのメカニズムやトラブルの解説を懇切丁寧かつリアルに描いたHP「ハネウマナイネンキ」で公開し、高評を博す。また、フェラーリの全てを微に入り細を穿って記した著書『フェラーリ メカニカル・バイブル』が好評発売中。