時間の速さは人によって違う!? 新時代の「時間観」をご存じですか

止まっていても実は光速で「動いてる」
松浦 壮 プロフィール

非常識が常識の「光の世界」

ところがどっこい、「光」は思った以上に深遠です。なぜなら、光速にはこんな特別な性質が備わっているからです。

「光のスピードは誰から見ても秒速30万kmである」

サラリと書きましたが、これが恐ろしい事を言っているのは分かるでしょうか?

例えば、時速300kmで走る新幹線を時速100kmで走る自動車から見ると時速200kmに見えます。これが常識です。ところが光は違います。秒速30万kmで飛ぶ光を秒速10万kmで飛ぶ未来型宇宙船から眺めたら、光はやっぱり秒速30万kmで飛んでいると言うのです。恐ろしい程の常識外です。

 

「そんなバカな!」と思うかも知れませんが、残念ながら(?)これは事実です。多少技術は要りますが、実際に光速を測れば確かめられますし、何より、これはいまや現代科学技術の基礎です。

例えば、皆さんが今使っている携帯のGPS機能は、地球の周りを秒速数kmというスピードで飛んでいる人工衛星から発信される電波を使っていますが、もしも電波(電波は光の一種です)のスピードが人工衛星のスピードや地球の自転・公転に影響されたら、場所の表示に数百メートル程度の誤差が生じて使い物にならないでしょう。光のスピードが誰から見ても変わらないというのは紛れもない観測事実です。

新幹線が青い球体の代わりにはならないのは、新幹線のスピードが見る人に依って変わってしまうからです。使えるとしても、せいぜい「地上」という限られた場所だけ。異世界のやり方も、青い球が同じスピードで動いているという設定だから基準に出来ただけで、そうでなければ、きっと夢の中の文化も違ったことでしょう。

その点、光のスピードは見る人に依らないので、「基準」としての資格を満たしています。「光秒」や「光年」のように、光を使って時間の単位で距離を測るやり方は、実は絶対的な意味があるのです。

驚くのはこれからです。実は、誰から見ても変わらないスピードがあることを突き詰めると、「時間は時間、距離は距離」という常識的な価値観が幻想で、時間と空間は本質的な意味で仲間であることがわかります。

最もシンプルな説明は、【速さ】=【距離】÷【時間】だからです。左辺の【速さ】が変わらないということは、そのしわ寄せは右辺の【時間】や【距離】に必ず及びます。

これはあまりに抽象的過ぎるので、上の絵を見ながらもう少し具体的に見てみましょう。高さ15万kmの超高層マンションを考えて(笑)、その真下の地上に鏡が置かれているとします。重力や地球の自転など、本質ではない部分はこの際無視してしまいましょう。

光のスピードは秒速30万kmなので、マンションの屋上から真下に光を放つと、光は地上の鏡に反射され、左図のようにちょうど1秒後に屋上に戻ってきます。

次に、右図のように、同じ光景をマンションの屋上すれすれを真横に飛ぶ飛行機から見てみましょう。飛行機から見るとマンションそのものが動いているので、光もそれに合わせて横向きに動き、Vの字を描いて屋上に戻ります。真横に飛ぶ飛行機から見てもマンションの高さは15万kmなので、このVの字の軌跡はもちろん30万kmより長くなります。

ところが、光のスピードは相変わらず秒速30万kmなので、飛行機から見た光は1秒以上の時間をかけて屋上に戻ることになります。

この事実を、どうかじっくり噛みしめて下さい。「屋上から出た光が地面に反射して屋上に戻る」という同じ現象を見ているにも関わらず、屋上にいる人にとっては1秒で起こり、飛行機の中から見ると1秒以上の時間がかかっていますね。これは見せかけではなくて、本当に時間の進み方が違うのです。これが相対性理論で有名な「時間の遅れ」です。

実際、今提示した材料だけから、この飛行機が光速の80%で飛んでいたら、飛行機の中に流れる時間が地上の60%で進むことを導けます(中学校で習う三平方の定理しか使わないので、ご自身で導いてみると楽しいですよ♪)。こうした現象もまた、現在では観測事実であると同時に、先程挙げたGPSをはじめとする様々な科学技術に応用されています。