日本人は「微量元素」不足だった…生きるための「元素」を知ろう!

不足すると「賢者もおバカさんに」
桜井 弘 プロフィール

私たちの日常にひそむ「微量元素不足」の危険性

私たちの日常にも、微量元素不足の危険はひそんでいる。倉澤隆平博士が長野県で調べた興味深い結果を紹介しよう。

約1400人の住民の血清中の亜鉛濃度を調べたところ、血清亜鉛値80マイクログラム/デシリットルを基準にして考えると、長野県の人びとは亜鉛欠乏の傾向にあることがわかった。長野県の人びとだけが特殊な食事をしているわけではないので、これは日本国民全体にも当てはまると考えられる。

 

老齢化ともに亜鉛が不足していくことは以前から指摘されていたが、亜鉛が不足すると、食欲減退や生活活性の低下、抑うつ傾向、味覚異常が現れ、長期に病床にある場合には褥瘡などが起こりやすくなると警告されている。

現在までに、人体からは亜鉛を含むタンパク質や酵素が300種類以上発見され、細胞への亜鉛の出し入れを調節しているトランスポーターも約30種類ほど知られているが、これらと亜鉛欠乏との関わりは、これからの研究を待たねばならない。

いずれにしても、健康を守るため、あるいは病気の原因を探る方法の一つとして、微量元素をよく考えることは大切だ。健康診断のときに、血液中の微量元素濃度を診断項目に加えることができれば、原因不明の病気を含め、将来の健康を考える重要な指標になると期待される。

元素は「友だち」

私たちは宇宙の星くずから生まれ、地球に存在している多くの元素を利用して進化し、いくつかの元素は私たちの生存や健康と深い関わりをもっている。

この地球に存在する多くの元素は、ロシアの化学者メンデレーエフ(1837~1907年)が発明した「元素周期表」にまとめられた。中学生のころ、「すいへーりーべぼくのふね……」と唱えながら元素の配列を覚えた、あの周期表である。

元素周期表元素周期表。113番は2016年11月に「Nh」つまり「ニホニウム」となった(Photo by iStock)

63種類の元素の整理からスタートした「元素周期表」は、その後も発展を続け、現在では118種類の元素が収められている。この周期表は、ダーウィンの進化論、アインシュタインの相対論と並ぶ、人類の宝物といえる。

周期表に掲載されている118種類の元素のうち、自然界に存在する約90種類の元素の一つひとつが私たちの体をつくり、命を動かしている。

イギリスの哲学者ラッセル(1872~1970年)はかつて、「ヨウ素が不足すると、賢者だった人がお馬鹿さんになる。精神現象は物質的な構造と深く関係しているように思える」といった。

現在では、ヨウ素だけでなく、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、マンガンなどが、神経や精神の働きに関係していることがわかってきている。

アメリカのサイエンス・ライターであるキーンは、「私たちは頭のてっぺんからつまさきまで、周期表に支配されている」と述べている。

私たちの体内で重要な役割を果たしている微量元素をはじめ、個性豊かな118個の元素たち。彼らは私たちの生命と毎日の生活にとってかけがえのない大切な友人たちだ。

たくさんの元素が並んでいる周期表は、一見無味乾燥に見えるかもしれない。けれどもそこは、命を、健康を、地球を、宇宙を考えるための素敵なガーデンだ。

彼らに関する最新情報が詰まった『元素118の新知識』を片手に、このガーデンを巡り歩き、元素たちと無二の親友になってください!

元素118の新知識