日本人は「微量元素」不足だった…生きるための「元素」を知ろう!

不足すると「賢者もおバカさんに」
桜井 弘 プロフィール

人体から発見された最初の「元素」

多種多様な元素が、生きている人の体内に存在していることは、どのようにしてわかったのだろうか?

歴史的に見て最も古い例は、1669年にドイツの錬金術師ブラント(1630~1692年)が人の尿を煮詰めて精製することで発見した「リン」である。彼は、人体の成分に元素が存在することを初めて示した人物だ。

英国の画家ライトが描いた絵画『賢者の石を探す錬金術師』からは、当時の雰囲気とリンを発見したブラントの誇らしげな姿を窺い知ることができる。

賢者の石を探す錬金術師ジョセフ・ライト作『賢者の石を探す錬金術師』。原題は"The Alchemist Discovering Phosphorus"で「リンを発見した瞬間の錬金術師」といったところ。

17世紀半ば、オランダのスワンメルダムやレーヴェンフック(画家フェルメールの友人としても有名)らは、単レンズ顕微鏡を使ってカエルや人の血液中に球状をした物質、すなわち「赤血球」が存在することに気づいた。

この発見を受けて、イタリアのメンギニは、血球を集めて燃やしたあとに残る微粒子中に、磁石に引きつけられる成分があることに気づき、これがであることを1745年に発見した。人間の体内に金属(鉄)が存在することを示した最初の例である。

以降、1808~1830年にかけては牛の骨や人の血液からマンガンが、1813年には胆汁から硫黄が、1927年には血液からが発見されるなど、人体中に存在する元素が相次いで発見されていく。

 

フランスのプリーストリーは1774年、赤血球が酸素と反応することに気づいた。1780年には、フランスのラボアジェとラプラスが赤血球が酸素を体のすみずみまで運んでいることを見出し、1825年にはドイツのライトヘルトが酸素を運搬するヘム鉄タンパク質=ヘモグロビンを発見した。

一方、イギリスのマンらは1939年、炭酸脱水酵素亜鉛を含む最初の金属酵素であることを発見している。

このようなヘモグロビンや炭酸脱水酵素の発見は、体の中の金属元素を直接検出しなくても、金属元素を含むタンパク質や酵素を発見することで、その活性の中心を担う金属元素を人間が生きていくのに必要な、「必須元素」と考えてよいことを証明する成果だった。

実際にこれ以降、多数の金属タンパク質・金属酵素が発見されていった。元素の欠乏症なども見出され、体の中には金属元素を含む多くの元素が存在することが解明・認識されていった。

現時点で、少なくとも22種類の必須元素が、人の健康や生命の維持にきわめて重要な役割を果たしていることが明らかにされている。それら必須元素は、体内での存在量に応じて、多量元素少量元素微量元素超微量元素に分けられている(「必須元素の分類」表参照)。

多量元素と少量元素とで体重のおよそ99.4%を占めるが、体内存在量がわずか0.0001%にも満たないマンガンやモリブデン、コバルトやセレンといった超微量元素もまた、私たちの健康維持に大切な役割を果たしている。この事実に驚かれる人も多いだろう。