日本人の深刻すぎる「セックスレス」をデータで検証する

これでは子供が増えるわけがない
吉村 泰典

不妊治療の前に、やることがある

若い世代がセックスをしない。たとえ結婚しても、セックスレスになる。これでは、いくら政府が「婚活」を推奨しようと、人口減少問題に歯止めをかけることは不可能です。放っておけば、日本人は近い将来「総セックスレス」とでもいうべき深刻な状況に陥ってしまうでしょう。

日本人の「セックスレス化」の何が最も大きな問題かというと、これは政策で解決することができないという点です。人の好き嫌いや気分、性的嗜好まで政治がコントロールすることはできません。もはや事実上、打つ手がないのです。

 

それにしても、なぜ現代の日本人は、これほどまでに「セックス嫌い」になってしまったのでしょうか。

少子化の要因は性生活の問題ばかりではありません。経済的な問題、待機児童問題、育児と仕事の両立の問題など、さまざまな要因があることは誰もが承知しています。さらに言えば、子供が生まれると、やらなければならないことがたくさん出てきますから、仕事に忙しい世代が子作りを控えたいと考えるのも当然かもしれません。

一方で、産婦人科医である私のところには多くのカップルから不妊に関する相談が寄せられますが、彼らの話をよくよく聞くと、不妊の原因が単なる「セックスレス」であることが少なくないのです。

「セックスをしていない」のに「子供ができないので悩んでいる」と言われても、何と言っていいのかこちらも困ってしまいます。そうしたカップルには、「不妊治療を考える前に、もっとセックスできるような環境づくりを考えてください」とアドバイスしています。

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バカげた話のように聞こえるかもしれません。しかし私には、この性行動の変化も日本の少子化の原因のひとつだと思えます。

しかも、往々にして「セックスが嫌だ」と言うのは、女性よりも男性の方なのです。彼らを見ていると、普段インターネット空間に浸りすぎて、実生活のことが後回しになっているのではないか、と言いたくなってしまいます。

現在は価値観が多様化していますし、他にも楽しいことがたくさんありますから、わざわざ面倒なセックスなんてしたくない、というのが若者の本音なのかもしれません。あるいは、バーチャル・リアリティの世界でしか人を愛せない若者が増えているのかもしれません。

私はいわゆる「団塊の世代」ですが、この原稿を読んでくださっている読者には、30代以下の若い世代の方も多いでしょうから、ぜひ性に関する認識やご意見を聞かせていただきたいものです。

結婚できない人の「男女格差」

もちろん、「セックスレス化」だけが日本人の少子化の原因ではありません。構造的な問題としては、結婚しない、あるいはできない人が増加していることが第一に挙げられます。

2015年に行われた国勢調査では、男性は30代前半で47.1%、30代後半で35%が独身女性は同じく30代前半で34.6%、30代後半で23.9%が独身となっています。

つまり、30代でいえば男性の半数近く、女性の3人に1人が結婚していないということです。ちなみに1985年までは、30代後半の女性の未婚率は1割を切っていました。今は結婚が「マスト」から「オプション」の時代になっているということでしょう。それ自体は、個人の価値観の問題ですから、とやかく言うべきことではありません。

ところが、細かい部分を見てゆくと、ここにも看過できない構造的な問題があることがわかります。

まずは、生涯未婚率(50歳時点で結婚していない人の割合)に少なからず男女格差があることです。以前から、生涯未婚率には男女間で差がありましたが、近年その格差が大きくなっています。2015年の調査をもとに計算すると、生涯未婚の男性が4.3人に1人であるのに対して、女性は7.1人に1人となっています。

これも当たり前のことですが、男女の人口総数はそれほど大きく異なりません。それなのに、女性と比べて男性の方が圧倒的に「結婚できない人」が多いわけです。

さらにこの未婚の問題は、雇用と密接に関係していることもわかっています。