飲食店経営に手を出して地獄を見る人の「三つの共通点」

だから止めておけといったのに…
三戸 政和 プロフィール

「投資回収」という発想をもたないから

次に問題となるのは、内装や設備などにお金をかけ、初期費用で手持ちの資金が圧迫するという「罠」だ。これを「投資回収の罠」と呼びたい。

ビジネスを始めるときに、「はじまり」を考える人はいても、「終わり」を考える人は少ない。実は、これが大問題なのだ。前回の記事では、飲食店業は戦争と同じだと指摘したが、戦争と同じく、「終わり」を考えないと、地獄への入り口に片足を突っ込むことになる。

「終わり」とはなにか。それは、初期費用にかけたコストを、どれぐらいのスパンで回収するかという計画のことである。

退職金が2000万円あったとしよう。この2000万円を投入する計画を立てるのは簡単だ。だが、「回収」まで考えられる人は少ない。

 

この目安にもつかえる会計用語に「減価償却」という言葉がある。ほとんどの人が知っているだろうが、簡単にいえば、店を出す際にかかる最初の費用を、経営を続ける年数で「費用」として認識していくということだ。

よくある飲食店のケースで考えてみよう。20坪くらいの小さな店を賃貸で構えようとすると、保証金や礼金、仲介手数料などでまず500万円くらいがかかる。これに加えて、設計内装や厨房機器、POSなどの設置・導入に300万円くらいかかる。また、出店時の広告費(チラシやHP制作)なども考えると、合計で大体1000万円ほどになる。

ここまで考えるのはそう難しくはない。が、この金額を回収する計画を立てられるだろうか。

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いったいどのくらいの期間でこの初期投資を回収しなければならいのか。飲食店の流行り廃りや競合店舗の進出などを鑑みると、通常は3年。銀行で初期資金を借りている場合、返済計画を考えても、最低5年以内での回収をしなければならない。

1000万円を5年間で均等割りしていくので、年間200万円、つまり月々17万円ほどを取り返さなければいけない。これが減価償却費の概念だ(あくまで、ごく簡潔に表現したものだが)。銀行への返済金額も、おおよそこのような目安感になってくるはずだ。

これに家賃が坪単価1万円だとして、光熱費などを合わせた月々の支払いが30万円となり減価償却費とあわせて47万円となる。

前回の記事ではFL比率の説明をしたが(食材原価と人件費を売り上げ全体の60%以下にしないと、その店は回らない、ということ)、最低限の利益確保として必要なFL比率を60%、最終的な利益を2%残そうとするだけでも、店を回すには月に240万円は売り上げないといけないことになる。

・売上高(100%) 240万円
・食材原価+人件費(60%) 144万円
・家賃など固定費+減価償却費(20%) 47万円
・消耗品や販促費などその他販売管理費(18%)43万円

・営業利益(2%) 6万円

それだけ売り上げても、なんと利益は6万円しか残らない。恐ろしい話である。