大人になっても手放せないものはありますか?

ライナスの安心毛布から学べること
片岡 義男 プロフィール

大事なブランケットが奪われる

日めくりカレンダーの2017年8月14日の四コマから、ライナスのブランケット問題は始まっている。そのブランケットをいつも引きずるように持っているのはやめなさい、と叔母さんに言われたライナスは、叔母さんが煙草をやめたら僕もブランケットをやめるよ、と言い返したのだとチャーリー・ブラウンに報告する。

ライナスとしては、叔母さんにうまく言い返した、と思って得意なのだ。叔母さんは煙草が大好きだから煙草をやめるなんて出来っこない、したがって自分もブランケットは手放さなくてすむ、という計算だ。

 

ライナスは学校へいくとチャーリー・ブラウンとおなじ教室で机を前後にならべている。ふたりはおなじ年齢である、という設定なのだろう。幼い子供らしく短絡的なアイディアから、枯淡の域に達していると言ってもいい諦観まで、ライナスの言うことは幅が広い。ほとんどの場合、彼の言うことは、物事の核心をついている。

ルーシーが登場してライナスに言う。叔母さんは約束どおり煙草をやめたのだから、あなたはそのブランケットを私によこしなさい、と言われてライナスは、大事なブランケットをルーシーに差し出す。ルーシーはそれをどこかに隠す。

二週間が経過する。I can’t live without that blanket!とライナスが叫ぶときのポーズが愉快だ。床に体を伏せ、顔を両手で覆って嘆き、背中から尻を高く上げている。ライナスは叔母さんに電話する。ほんとに煙草をやめたことを、ライナスは叔母さんから聞かされる。

ルーシーは隠しておいたブランケットを出してくる。あなたはもう二週間もこのブランケットに触れることなく過ごしたのだから、あなたはこのブランケットを必要としてないのです、したがってこのブランケットは焼却炉で焼きます、と言う。ブランケットを焼く行為は、あなたがあらたに獲得する心理上の自由を象徴してます、とルーシーは説明する。

ルーシーの言うことには、常に一理はあるように思えて、そこが面白い。ルーシーのこの一理に対してライナスは、焼くのは僕のブランケットの現物ではなく、象徴としてのブランケットを焼いてはどうか、とルーシーに提案する。ルーシーが使った象徴という言葉を、そうとは意図しないままに、ライナスが投げ返した、と理解するといい。

このブランケットを焼却することによって、あなたがいつも感じていた不安定な気持ちは象徴的に消え去ります。ブランケットによって心理的に拘束されていたあなたは解き放たれ、あなたは新しい自分になるのです。とルーシーは説明する。精神分析医による解説、というものの揶揄として受けとめるといいだろう。