大予想!「小田急線複々線化」でダイヤはこう変わる

建設費回収は可能なのか?
佐藤 信之 プロフィール

子細に検討してみると、最混雑区間である世田谷代田~下北沢間で最混雑1時間に9,000人の増加があることを前提にすると、1人平均乗車キロを10km(代々木上原~和泉多摩川間相当。平成26年度の小田急電鉄の平均乗車キロは15.5km)。とすると90,000人キロとなり、これに1人・1キロ当たりの運賃収入9.81円を乗じるとおおよそ90万円の増収となる。

 

この数字には朝の最混雑時1時間、しかも片道だけの数字であるので、この3倍の増収があるとすると年額約10億円となり、直接経費を償ってなお、工事費300億円(これから補助金・負担金を差し引く)に対する資本費相当額を満たすことになる。すなわち、工事費を回収するには最混雑1時間に9,000人の旅客が増加する必要があるのである。

相鉄・JR直通開業予定に合わせた?

今回は、大幅な増発にもかかわらず車両の増備が最小限にとどめられた。70000形新型ロマンスカー7両編成2本のほか、通勤用の3000形の中間車を若干新造して8両編成を10両編成とする。これにより、地上で使用している地下鉄直通用4000形を捻出して、増発用に充てる。(現在4000形は16編成あるが地下鉄直通に運用しているのは7編成。そのほか基本的に地上線に7編成、予備2編成)。

この工事は、もともと平成16年度に完成する計画であったが、結局10年以上遅れてしまった。この時期に開業に漕ぎ付けたのは、相模鉄道とJRの直通線の開業予定に合わせようとしたのかもしれない。現在は、直通線の完成時期が平成31年度末に延期されたが、これが完成すると相模鉄道の電車が東海道貨物線・横須賀線の線路を経由して渋谷・新宿に乗り入れることになる。

相模鉄道は小田急小田原線と海老名駅で、江ノ島線と大和で接続している。相鉄・JR直通の電車は、距離は長いが途中駅が少ないため、小田急にとっては強敵(小田急は相鉄ホールディングスの筆頭株主)となるだろう。

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なお、平成16年11月に喜多見~梅ヶ丘間を複々線化したが、その前後で、運輸収入は平成15年度の1,084億円から平成17年度1,091億円に7億円増加したのに対して、減価償却費の増加により鉄道事業の営業利益は、平成15年度の246億円から平成17年度の169億円に77億円減少した。その後、複々線化によるスピードアップで、神奈川県内の沿線自治体の人口が増加し、時間をかけて投資効果を実現していった。今回はどうなるか、注目される。

※ 挿入図は同社のパンフレットより

東京や大阪の鉄道整備は「おおむね完了」したという。東京では副都心線以来、新たな地下鉄建設はなく、大阪でもモノレール延伸計画が中止になった。しかし、本当に現在の通勤状況は満足すべきものなのか。混雑率200%に達する東西線や田園都市線をはじめとして、問題の大きな路線をピックアップし、問題点と対策を解説。さらに輸送改善の歴史をふりかえり、将来必要な新線はなにか、その費用はだれが負担すべきかを展望する。