田中角栄こそ、AIに淘汰されない究極の人材である

生き残りたいなら、メカトロ人材になれ
鈴木 貴博 プロフィール

肉体労働をするしかないのか

では、どうすればいいのか? 

実は人工知能の進化で知的な仕事が消滅してしまう一方で、ロボットの進化はそれほどのスピードでは進まないという技術発展上のボトルネックが存在する。

 

もちろん、倉庫や建設現場で重たいものを運ぶような足腰や腕が使われる肉体労働の仕事については、部分的にロボットに代替されるリスクは十分ある。しかし、人間の指の能力をロボットで再現できるようになるには、20年では開発期間は足りない。とりわけ指を開発することは、実はロボット工学者にとってとても難しいことなのだ。

したがってコンビニの棚に商品を並べるような指先を使う肉体労働は当分の間、仕事として消滅することはないのだ。

ところが、ここにもジレンマがある。

肉体労働よりも頭脳労働者になったほうがずっと給料がいい。その頭脳労働の方が先に消滅し、肉体労働しか人類の優位がないというのであれば、「いい生活をするための就職プラン」という考え方そのものが成立しなくなる未来が来るのではないか。

そう結論を出す前に、ひとつ重要な視点がある。

「メカトロ」という言葉をご存知だろうか? エレクトロニクスとメカニックが一体になって使われる技術を指す言葉だ。

人工知能で制御された工作機械や、高度医療に用いられる内視鏡など、メカと電子技術が組み合わさってできた商品はみなメカトロ製品である。銀行のATMのように、お金をメカで数えて、それを銀行システムに読み込むような製品もメカトロニクスの領域の完成品である。

実は日本は、アメリカと比べてこのメカトロニクスの分野で比較優位にあると言われている。ITの技術ではグーグルやアマゾン、アップルに大きな差をつけられてしまった日本だが、単純に半導体チップとソフトウェアを組み合わせたものではなく、そこにメカが加わった場合には、日本企業のエンジニアは抜群の優位性を見せる。スマホはアジアの企業でも作れるが、高機能一眼レフカメラは日本にしか作れない。

人間にも「メカトロ」な仕事はある

ただし、この分野が今後大きく発展するかと言えばかなり厳しい。

むしろ狙い目は製造現場の自動化を進めるためのFA関連だ。たとえばファナックや安川電気、森精機といった企業は、グローバルなIT企業が発展すればするほど、それらのIT企業と同期する形でやはり業績を伸ばしている。しかもメカトロはスタンフォード大学の学生が簡単にマネすることができないから、日本人エンジニアがアメリカ企業に仕事をとってかわられる恐怖も比較的少なかった。

そしてこのメカトロの考え方は、仕事消滅の危機に直面する20年後の個人の仕事にも通用する。つまり、メカトロ人材を目指す、というわけだ。

たとえば医者の場合、内科医の仕事は比較的早い段階で人工知能にマネされてしまうだろう。しかし外科医は違う。メスで患者の体を切り開いてその場で病巣を確認しながら腫瘍を切除して再縫合する。こういった手作業の仕事は人工知能とロボットにとって代わられるまでにはまだ20年よりもずっと長い期間がかかるだろう。