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あの頃の恋愛は、告白からは始まらなかった

1970年代の若者と空気【3】
堀井 憲一郎 プロフィール

少年少女たちの反乱

中学一年生だから、若者というよりも子供に近いけれど、そういう生徒たちの反乱である。

ここの学校はなかなか厳しい。ラテン語が訳せないとあとで先生の部屋で尻をおもいっきり叩かれる。

重苦しく、形式的で、強圧的で支配的である。もともと、学校というのは、そういうものである。親たちも子供を理解しようとはしない(メロディのお父さんは、この年齢になって見るとなかなか好感が持てるのだが、1971年当時はそんなことおもいもしなかった)。

大人はわかってくれない。でも従うしかない。

ダニエルとメロディは愛ゆえに反旗をひるがえす。

ダニエルの親友トム・オーンショー(ジャック・ワイルド)を中心として、クラスの全員が、ダニエルとメロディの結婚を応援する。

授業をボイコットして全員で抜け出し(爆弾を作ってる子だけ爆弾を完成させるため教室に居残っていたが、完成させ、すぐに駆けつけた)、学校の近くの廃墟でダニエルとメロディの結婚式を挙げる。

ボイコットに気がついた校長以下、学校の教師陣は彼らを連れ戻すために一団となってそこに乗り込む。

ところが、生徒たちは反抗し、戦い、ついに先生みんなをやっつけてしまう。教師たちはほうほうのていで逃げ、ダニエルとメロディはトロッコを二人で漕ぎながら遠くへと去っていく。

おしまい。

なかなかすてきです。中学生にはぴったりの世界だ。

中学生は自分の将来がどうなるかなんて、まったくわからない。ときに大人にどういう将来を考えているか聞かれるが、きちんと答えられない。漠然とした方向を語るか、こう答えれば大人は満足するだろう、という嘘の答えを並べるしかない。それがふつうの中学生だ。

好きな者二人だけで、トロッコを漕いで旅立っていく、というのは、その向こうにどういう現実があるのか描かれてないぶんファンタジーとして魅力的だった。その先は考えない。考えなくていい。それは14歳にとってすてきなメッセージだった。

 

反抗した少年少女たちが勝つというのも、とても惹かれた。

中学校なんて英国でも日本でも似たようなもので、学校に通うのはどこかいつも憂鬱である。その憂さを晴らしてくれたのがこの映画だったのだ。いまおもいだしても、ちょっと心が軽くなる。

若者が反抗して、自由を勝ち取るというところが(きわめて局地的で暫定的な勝利ではあるが)とても70年代らしいとおもう。

そこの部分からとらえると、『小さな恋のメロディ』は〝アメリカン・ニューシネマ〟の流れのなかにある映画だとおもう。

「小さな恋のメロディ」も自由を渇望する映画だったのだ。でもニューシネマ的なシリアスさはなくずっとコミカルで、だからこそ中学生が自分たちの映画だと感じられた作品だった。大好きだった。