在日米軍より強大「太平洋軍」の役割と任務を知っていますか

9つの統合軍のうち最大規模
土屋 大洋 プロフィール

狙われる太平洋軍司令官

ハリス司令官が日本語を少し話すのは、父親が米海軍の軍人、母親が神戸出身の日本人で、自身も1956年に横須賀で生まれたというバックグランドがあるからである。

しかし、すぐに両親とともに米国本土に移り、海軍兵学校(アナポリス)を卒業して、父親と同じく米海軍の軍人になった。

これまでも日系の米国軍人は活躍してきた。第二次世界大戦中には442連隊が有名であり、同連隊出身のダニエル・イノウエはハワイ州選出の連邦上院議員として活躍した。近年では陸軍のエリック・シンセキが陸軍参謀総長になっている。

しかし、統合軍司令官にまで上り詰めたのはハリスが初めてである。そういう点ではハリスは多くのプレッシャーを感じながらマイノリティとして出世の階段を上ってきたということがいえるだろう。

ハリスは太平洋軍司令官に就任すると、中国に甘い態度をとった前任のサミュエル・ロックリア司令官とは打って変わって強硬な姿勢を隠さなかった。

中国の南シナ海での活動を「砂の長城」を築いていると批判し、対中強硬姿勢を躊躇するバラク・オバマ大統領(つまり、最高司令官)に対するもどかしささえ見せることもあった。

ハリス司令官は、日本や韓国といった同盟国を訪問するだけではなく、中国に乗り込んで軍関係者と会談することもいとわなかった。そのハリスに対し中国は、北朝鮮問題で米中で協力する代わりにハリスの更迭を求めたともいわれる(中国政府は報道を否定)。

真相は分からないが、日系の司令官を中国が警戒していたとしても不思議はない。ハリス司令官が日本を訪問する際には安倍晋三首相や自衛隊の河野克俊統合幕僚長とも会談を重ねている。

〔PHOTO〕gettyimages

そのハリス司令官は、2018年はじめに退任する見通しになっている。2017年8月29日付けのワシントン・ポスト紙は、ドナルド・トランプ大統領のホワイトハウスが、ハリス司令官をオーストラリアの大使にする可能性があると報じている。

オーストラリアは日米と連携し、アジア太平洋の安全保障を支える姿勢を見せており、ハリス司令官は何度も同国を訪問している。引き続き、外交官としてそれを支えることになるのだろうか。

 

いずれにせよ、われわれは、日本を含むアジア太平洋の安定を考える際、在日米軍だけではなく、太平洋軍全体に対する理解を深める必要がある。

在日米軍司令部のある横田の向こうにあるのは、国防総省のあるワシントンDCだけではない。その間にあるハワイにも注目しなくてはならない。