在日米軍より強大「太平洋軍」の役割と任務を知っていますか

9つの統合軍のうち最大規模
土屋 大洋 プロフィール

なぜ太平洋軍が重要か

なぜ37万人もの人員が太平洋軍に割り振られているのか。それはロシア、中東と並んでアジア太平洋地域が米軍にとって戦略的に重要な地域だからに他ならない。

対ロシアには米国の統合軍の一つである欧州軍が対峙するとともに、北大西洋条約機構(NATO)軍もある(米国もNATOのメンバー)。中東では湾岸戦争やイラク戦争で見られたように中央軍が戦っている。

アジア太平洋では、中東ほどの大きな戦闘は、近年は起きていないが、朝鮮半島や台湾海峡、東シナ海、南シナ海に潜在的な紛争を抱えている。それゆえに太平洋軍の重要性が高まってきている。

われわれ日本人が日常的に意識してきたのは東京の横田に司令部のある在日米軍や、横須賀を母港とする揚陸指揮艦ブルー・リッジに司令部を置く第七艦隊だった。

図1は、主要5紙における「在日米軍」に関連する記事数の推移である。2006年の沖縄の普天間基地問題をピークに、毎年多くの記事が書かれていることがわかる。

図1

それに対し図2は、同じく主要5紙における「太平洋軍」に関連する記事数の推移である。図1の縦軸が4000であるのに対し、図2の縦軸が300であるのに注意していただきたい。

図2

太平洋軍は報道ベースで見てもわれわれの関心を引いてこなかった。突出して多かったのは2001年にハワイで起きたえひめ丸事件だが、それとて、太平洋軍が何かということへの関心を集めることはなかった。学問的にも太平洋軍を扱ったものはきわめて少ない。

しかし、図2の2016年のグラフにあるとおり、南シナ海における中国の動きと、北朝鮮のミサイル危機は、太平洋軍関連の記事を急増させている。おそらく2017年は2016年の数を上回るだろう。

 

太平洋軍は、アジア太平洋地域の安全保障を考える上できわめて重要な役割を果たしている。

在日米軍は、日本の安全保障にとって重要なのはいうまでもないが、実は太平洋軍の下位統合軍に過ぎない。階級を見ても、太平洋軍司令官は四つ星の大将(海軍提督)だが、在日米軍司令官は三つ星の空軍中将である。

いざアジア太平洋での有事の際に指揮を執るのは太平洋軍司令官であり、在日米軍司令官ではない。

日本を含む太平洋を管轄する米海軍部隊として第七艦隊の名もよく知られている。しかし、第七艦隊は、第三艦隊と並んで太平洋艦隊の下にあり、さらにその上に太平洋軍がある。元締めは太平洋軍ということになる。