『笑福亭鶴瓶論』を著した「てれびのスキマ」こと戸部田誠氏のもとに、驚きの電話が…!
ある日の朝、見知らぬ番号から着信があった。寝ぼけ眼で取ると、電話口から聴こえた声に驚愕した。
「鶴瓶です……」
その電話の主は笑福亭鶴瓶さんだったのだ。
僕は8月10日に新潮社から『笑福亭鶴瓶論』を刊行した。鶴瓶さんの過去の言動やエピソードから、鶴瓶さんの人生哲学を紐解いた本だ。
だから、鶴瓶さんが、たとえば『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK総合)などで出会った人から贈り物をされた際、「届いたかどうか不安やろうから」という理由でお礼の電話をかけるなどということももちろん知っていたし、今回の本の出版に際しては、予め鶴瓶さん側の事務所の方々にも寛大なご対応とご協力をいただいており、その際、僕の連絡先もお伝えしていたので、もしかしたら、という気持ちも正直あった。
だが、実際にマネージャーさんも何も通さず、いきなり鶴瓶さんご本人から直接お電話をいただけるなんて!
鶴瓶さんは常々、「縁は努力」だと言っている。ただ、出会っただけでは縁にはならない。それをつなげる努力をしなければならないのだ、と。まさに、その実践の現場を体感してしまったのだ。
そのお電話では、これから『きらきらアフロ』(テレビ東京)の収録があり、『笑福亭鶴瓶論』の話をしようと思っている旨をお話していたため、電話を切った後、ふと思い至った。
これは「来るなら来ていいよ」ということではないか?
僕が鶴瓶さん自身をもっともよくあらわしていると思う鶴瓶さんの言葉にこんな言葉がある。
「人見知りしない、時間見知りしない、場所見知りしない。そこに対していかに助平であるか」
そこから、『笑福亭鶴瓶論』のキーワードに「スケベ」を選んだ。
よく「出会いの天才」などと称され奇跡的な出会いを数多く体験している鶴瓶さんだが、それが何故起こるかと言えば、単純に誰よりも多くの人に会い、誰よりも多くの多くの時間を使い、誰よりも多くの場所に赴いているからだ。その上で「縁は努力」の姿勢を貫いているからに他ならない。そんな主旨の本を書いたのだ。
ここでこれまでの自分のように相手に迷惑なんじゃないかなどと怖気づいてきっかけを見逃したらきっと後悔するし、何より「鶴瓶イズム」に反する。
僕はすぐにマネージャーさんに連絡を取り、行ってもいいか確認を取ると、着の身着のままで、収録場所に押しかけるように伺った。
すると鶴瓶さんは満面の笑みで迎えてくれた。やっぱり「鶴瓶イズム」で行ってよかった。
8月30日深夜放送の『きらきらアフロ』でも本について触れていただき、たまたまその放送日に開催された「笑福亭鶴瓶落語会」のオープニングでも紹介していただいた。
「俺は読んでないんやけど、読んだ一般の人から電話がかかってくるのよ。『あのエピソードが感動しました。知ってますか?』って。知ってるちゅうねん! 俺の話や!」
幸運にもその落語会に行けた僕は改めてご挨拶をすると、打ち上げの食事会にも誘っていただくという僥倖にもあずかった。スケベに積極的に動けば道が開けていくというのを身をもって体験させてもらったのだ。