2017.09.11

群大病院「8人死亡」事件、執刀医の暴走はこうして起きた

問題は、組織にあった
高梨 ゆき子 プロフィール

事態が発覚してから、執刀医の暴走は、ネット上で「殺人鬼」「連続殺人」とまで書かれた。断片的な情報からは、とんでもない悪人が起こした特異な事件というイメージで見られているのかもしれない。しかし、全体像を知れば、そのような表現が、問題をむしろ矮小化するものだとわかるだろう。

 

新聞には多くの関連記事を書いてきた。それでも、書ききれないことがたくさんあった。しかも、一日で古紙となり消えていく日刊紙では、一度に伝えられる内容は断片的で、それらをすべて丁寧にフォローしていなければ全体の理解は難しいが、そのような読者は、いたとしても少数派だろう。

一連の出来事の本質を少しでも多くの人にお伝えするには、一冊にまとめるしかないのではないか。

それは、長年、新聞記者として文章を書くことを仕事にしながら、本を出したいなどとはほとんど考えたこともなく、ただ目の前のテーマを追い掛けて記事にすることに邁進し、それが少しは世の中の足しになっていると感じることにささやかなやりがいを見出してきた凡庸な私が、『大学病院の奈落』出版を考えるに至った動機である。

この本を通じて、群馬大学病院の事件が残した教訓について理解し、よりよい医療とはどういうものか自分なりに考えてみてくださる方が一人でも増えるとしたら、それは望外の喜びである。

大学病院の奈落

読書人の雑誌「本」2017年9月号より

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