中国で大炎上した「慰安婦スタンプ」と「日本軍コスプレ」

表現の自由か、不謹慎か…
安田 峰俊 プロフィール

また、8月13日には広西チワン族自治区南寧市賓陽県でも、地元のマイルドヤンキー系の若者2人が「ネットで目立ちたかったから」と高速鉄道の駅の前で日本陸軍の軍服を着用。その格好のままオラついていたところ、警察に連行された。

旧日本陸軍の軍服でいきがる、夏の終わりの無軌道な若者たち。スマホで自撮りもおこなっていた(現地報道より)

彼らについても、やはり治安管理処罰法に違反したかどで10日間の行政拘留を受けたという。ちなみに事件は広西チワン族自治区の地方都市で発生しただけに、彼らの「パフォーマンス」の際はヒマな通行人たち300人近くが見物。やがて血の気の多い人たちがみんなで彼らをどつき回し、警察が来たころには若者2人はボコボコにされていたそうである。

愚行の「自由」は制限されるべきか?

慰安婦スタンプの制作販売と軍装コスプレ。国際的な共通認識から判断しても、中国が72年前に日本の侵略を受けたことは事実であり、その被害者や遺族がまだ存命している以上は、こうした表現は基本的に「悪趣味」だと考えるより他ない(趣味を頑張りすぎただけにも見える上海の軍装同好会は多少かわいそうな気もするが)。中国人ならずとも、不快感を抱く人がいるのは当たり前だ。

だが、これが仮に他国で起きたことならば、事態は当事者や所属組織の謝罪を通じて、民間社会の内部で幕引きがなされる。なぜなら、(著作権の問題をひとまず措くならば)人気映画の風刺やパロディを作ることも、自分の好きな格好をすることも、本人の責任のもとでおこなう限りは表現の自由の範疇であるはずだからだ。

 

結果としてそれに不快感を覚える人が多くいて世論の批判を浴びたならば、やはり本人自身が「自由」な行動に対する責任を取らなくてはならない。良くも悪くもそういう性質の話のはずである。

しかし中国の場合、ここに容赦なく公権力が介入して事態が収集されてしまう。当局側が主張する法的根拠は、中華人民共和国治安管理処罰法の第23条「公共秩序の擾乱」に抵触するという点なのだが、かなり恣意的に法律が解釈されているのは明らかだ。また、一連の話題については共青団系の『中国青年報』や解放軍系の『解放日報』などが大きく報じたことでネット上の炎上が誘導されたきらいがあり、むしろ当局主導で吊し上げが推進されたと見ることも可能である。

歴史問題についてそれほど意識を持っていない若者が、好き勝手な行動をしたことで生まれた不祥事。本来はB級ニュースにすぎない事件からも、表現の自由というヘビーな問題が垣間見えてしまうのが、いかにも当世の中国らしい話であると言えるだろう。