「事務所が上場」ユーチューバーはこれからどうやって儲けるのか

ネット広告の単価は下がる中で
加谷 珪一 プロフィール

では、こうした状況においてユーチューブに特化したUUUMの業績はどう推移するのだろうか。

同社の2017年5月期の売上高は約69億円、経常利益は3億5000万円である。初値である6700円を基準にすると、PER(株価収益率)は何と148倍という数字になる。市場では、驚異的なスピードで同社が業績を拡大すると予想していることになる。

サザンオールスターズ、ポルノグラフィティ、星野源などが所属する大手事務所アミューズのPERは約24倍(2017年3月期)なので、UUUMの評価はアミューズの6倍も高い。その理由としては、ユーチューブという新しいメディアに特化しているという部分が大きい。

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スキャンダルリスクが怖い

成長のカギとなるのは所属タレントのポートフォリオ戦略だろう。エンタメというビジネスは当たり外れが大きく、そうであるが故に、既存の事務所はタレントのポートフォリオ管理にかなりの労力を割いている。

ヒットしている旬のタレントが稼ぎ出すお金を、かつて収益に貢献したベテランへのギャラや、新しく発掘するタレントへの投資に充て、資金を平準化していく。

もしUUUMがネットで流行しているタレントを次々に自社に所属させていき、機械的にその収益をマネジメントすることができれば、ネット市場が拡大している限り同社は成長できることになる。

だが、そのようなスタイルでは、タレントにとってUUUMに所属する必然性は薄くなってしまう。一方、UUUMが大手事務所として積極的に企業タイアップや新人発掘、プロモーションなどを行えば、同社の高いポジションは維持され、多くのネット・タレントが同社への所属を望むだろう。

だが、そうなった場合、投資資金の平準化が必要となり、タレントのポートフォリオ戦略も従来の事務所と大差なくなってくる。経営規模は大きくなるが、148倍というPERは許容されないかもしれない。

 

また芸能事務所の場合、大手になるとタレントの私生活の管理という問題も重くのしかかってくる。かつてはホリプロや吉本興業も株式を上場していたが、両社ともわざわざ上場廃止を決断したことには理由がある。

タレントのちょっとしたスキャンダルでも株価が大きく変動するため、芸能事務所の経営者にとって上場のリスクは大きいというのが現実なのだ。

UUUM所属タレントではないが、8月には個人の疑似株式を売買するサービス「VALU」において、人気ユーチューバーが疑似株式を「売り逃げ」するという騒動が発生。所属事務所の責任を問う声も上がっている。

UUUMがネット時代らしい合理的な事務所経営という新しいスタイルを提示できるのか、あるいはネット・マーケティングなど企業向けサービスにシフトするのか、今後の戦略に注目したい。