世界中の製薬会社が次々と撤退「認知症の薬」はやっぱり作れないのか

25年間、数千億円かけても全部失敗
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では、なぜここまでアルツハイマーの治療薬の開発は難しいのか。それは、薬を使うタイミングと関係している。東京大学大学院医学系研究科の教授で神経病理学を専門とする岩坪威氏が言う。

「アルツハイマー患者の脳には、アミロイドβ(Aβ)という物質、タウタンパクという物質が溜まっていることが明らかになっています。病気の大元の原因にはAβが関係していて、途中からタウが溜まり、それらが神経細胞を破壊すると考えられている。

治験が進められている治療薬の多くは、Aβを標的としています。大きく分けて、Aβを生成する酵素を阻害する薬、Aβに対する抗体を投与する抗体療法の2種類。ソラネズマブは後者です。

アルツハイマーの薬が効果を発揮できないのは、薬を使うタイミングが遅いからだと考えられます。Aβは早い段階で脳に溜まっているのですが、症状が出るまでにはタイムラグがある。それゆえ、症状が出てから大元の原因であるAβに対する治療を始めても、遅きに失しているのです。

脳は予備能力で頑張っているけれど、実はすでにAβが溜まっている。今後は、もう一段階、二段階、早い時期に薬を使わなければなりません」

 

しかし、治療を始める時期を早めるのは、想像以上に難しい。これがアルツハイマーの薬を作るうえでの大きな障害になる。東京大学大学院薬学系研究科の小野俊介准教授が言う。

「認知症が20~30年かけて進行していくと考えると、治験において、一見健康そうな人も対象に含めなくてはなりません。治験期間も数年、数十年単位でやらなければ、薬が効いているか判断できませんが、協力してもらうのは非常に難しい。

仮にこうした条件をクリアして何十年も時間をかけたとしても、投資の額はこれまで以上に莫大になる。結果が出なければ企業の存続にかかわってくる事態となります」